恋愛・ソリューションズ
□第一章
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カーテンの隙間から射す白い光りと爽やかな秋の風。優しい風の音がゆっくりと秋の匂いを運んでくる。
こんな、一見すがすがしい朝の目覚めのように思えるが、瞬間、富樫 大吾(とがし だいご)は自分の目を疑った。
「おはよ、やっと起きたんだ?」
と、すぐ横には裸でうつ伏せになっている塩澤 隆(しおざわ りゅう)の姿があったのだ。
昨夜の事を思い出せずに、まさかと思いながらかけていた布団を剥ぐと案の定自分も裸という事に頭痛と吐き気がする。
「アンタ、昨日俺になにした」
寝起きで喉が渇いているせいか、富樫はかすれた声で塩澤に問う。塩澤は口角をあげながら口を開けた。
「なにって? この状況見れば分かるだろ、それともなに?」
「んっ」
富樫はぐい、と塩澤に顎を掴まれた。
「昨日の夜、お前にやった事を事細かに話して欲しいわけ?」
「アンタな!」
塩澤の手を払い除けるが、寝起きで思うように体が動かずそのまま塩澤に両手を抑えられてしまった。
「うっ、いてーな!離せよ」
「黙ってろ」
力の入らない手を抑えられ、身動きの取れない富樫に塩澤の顔が近づく。
「…やめっ」
互いの唇が触れそうになった瞬間、塩澤のスーツのポケットから携帯の着信音がした。
「ちっ、今いいとこだっつのに…おはようございます塩澤です、ええ、納品のデータの件ですよね、はい、分かりました、向かいます、ええ失礼します」
電話を切ると、塩澤は白いシャツに腕を通し、細い眼鏡をかけた。
すると、シーツに包まった富樫が半ば睨みつけるかのような目で塩澤に言う。
「おい、塩澤さん」
「ん? なんだ」
「その…昨日、俺ら…マジで…やったのかよ」
「お前、本当に覚えてねえのか?」
その言葉に寝起きの富樫は頭をフル回転させ、昨日の事を思い出そうとした。
(そうだ…確か、昨日むしゃくしゃした事が重なって、塩澤さんを飲みに誘ってたんだ…。でも…それから、ええと…)
しかし、何度考えても同じ所までしか思い出せない。諦めて塩澤の声に富樫は二日酔いで重い頭を縦に振った。
「そうか、まあ覚えてねえならしょうがないよな」
そういうと塩澤は鞄を持ち、ホテルの部屋を出ようとする。
「ちょ、待て!答えろって、塩澤さん!」
「あ、そうそう」
「?」
そういうと、塩澤はドアに手を掛けながらまだベットに座る富樫にまるで思いだしたかのような素振りで言った。
「酔ってる時のお前、すげえ積極的で可愛いのな」
そう言い放ち、赤面する富樫をよそに塩澤はドアの向こうへと消えていった。