隣のスラップスティック!

□番外編
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「鈴木!佐藤!うっせえぞ!仕事しろおお!!」



そう声を掛けるのが、よもや仕事の一環になってしまっている。

彼はこの営業組織の支部長、木野 才司(きの さいじ)、三十九歳。


派遣会社の営業である、この支部に支部長となってから随分立つが、未だかつてこんなに大声を張り上げる職場だとは思ってもみなかった。


というのも、



「木野さん、これ戦略会議資料でーっす」


このふざけた男、鈴木 紅(すずき こう)。
こいつが うるさくてたまらない。




しかし。




「あれ?木野さん?無視?」
「聞こえてんだよ、バカが」
「へっへ〜」


このふざけた男。
というか、ふざけた この「恋人」がたまらなく 好きなのも事実。






「そういや鈴木」
「なんすか〜?」



「仙台出張、佐藤の都合はどうだ」
「あー、なんか微妙すね。佐藤の恋人が佐藤を俺と出張させたくないんですって」



「ほう…」




すると、木野は少し考えたあと、
鈴木のネクタイを手に取り、自身に引き寄せた。




「どわっ!」


「同意見が揃ったな」
「え?」




鈴木は目を丸くすると木野は静かな笑みを見せる。








「俺も、お前を他の男なんかと出張にいかせたくねえし」

「木野さん…」


俯いた鈴木に木野は続けた。


「…お前、普段ふざけてるくせに、 この手の話しには滅法弱いのな。耳まで真っ赤だぞ」

「…バカにしてるんすか…」

「そんなところも 可愛いよ」

「…うー…」





木野はまた、赤面する鈴木のネクタイを引き寄せ、
彼に軽いキスをした。



「ちょ、木野さん、ここ会社」

「いい、見せつけてやれ」

「何言ってんすか…!」



赤面する鈴木の頭を、木野は優しく撫でた。







「木野さん…?」















「出張、俺が同行する」

「はっ?」



「最近忙しすぎてお前を抱いてなかったからな。せっかくだし あっちにホテル取って二人で泊まろう」


「ええ…!ちょっと…さ、佐藤に怪しまれませんかね」


「大丈夫、彼も世に言ういわゆる鈍感だ、心配ない」


俯く鈴木に、








「なんだ、俺とじゃ不満か」










「いえ…なんか嬉しくて…仕事に集中できなくなりそうです……」



「どこまで可愛いんだよ 俺の恋人は」







木野は笑い、もう一度、鈴木の薄い唇にキスを落とした。














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