殺人鬼の過去

□眠りのキス
2ページ/3ページ





「ねぇ、なんで母さんは寝る時にキスをするの?」





小さい頃から母は俺によくキスをしてくれていた。






長い髪があたって痒いけど、
不思議と嫌な感じはしなくて。









母は笑って言った。













「ミヅキ君が、いい夢見れますようにって、おまじないよ」








「だから鼻にキスすんの?」




「そうよ」







「じゃぁ、母さんもいい夢みれますように」






俺はそう言って母の鼻の頭に短いキスをした。




母は「ありがと」、そう言って俺を抱きしめる。




長い髪がふわふわ揺らいで、
母に抱きしめられた俺の身体は幸せを感じた。










#####








風が強い夜、悪戯しようと思って「彼女」の部屋に入った。



怖い夢を見そうで、寝れないなんて言う彼女に、
母親のまじないだって言って鼻の頭にキスをする。



すると案の定彼女は、なんのおまじないかと聞いてきた。




≪いい夢がみれるおまじない≫
なんて恥ずかしくて言えるはずもなく、




咄嗟に「知らねぇ」なんて答えると、彼女は笑った。







暫くすると嘘みてぇに安心したような顔つきで彼女は目を閉じた。








眠った彼女に気付かれないよう、







「…いい夢、見れますように…」








そう言って、もう一度鼻の頭に短いキスをする。














月あかりが彼女と俺の洋書を優しく照らしている。








「…安心した顔で寝やがって…」







つーか、












母さんの「おまじない」、
やっぱ すげぇ効くのな。









end




­
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ