殺人鬼の過去
□眠りのキス
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「ねぇ、なんで母さんは寝る時にキスをするの?」
小さい頃から母は俺によくキスをしてくれていた。
長い髪があたって痒いけど、
不思議と嫌な感じはしなくて。
母は笑って言った。
「ミヅキ君が、いい夢見れますようにって、おまじないよ」
「だから鼻にキスすんの?」
「そうよ」
「じゃぁ、母さんもいい夢みれますように」
俺はそう言って母の鼻の頭に短いキスをした。
母は「ありがと」、そう言って俺を抱きしめる。
長い髪がふわふわ揺らいで、
母に抱きしめられた俺の身体は幸せを感じた。
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風が強い夜、悪戯しようと思って「彼女」の部屋に入った。
怖い夢を見そうで、寝れないなんて言う彼女に、
母親のまじないだって言って鼻の頭にキスをする。
すると案の定彼女は、なんのおまじないかと聞いてきた。
≪いい夢がみれるおまじない≫
なんて恥ずかしくて言えるはずもなく、
咄嗟に「知らねぇ」なんて答えると、彼女は笑った。
暫くすると嘘みてぇに安心したような顔つきで彼女は目を閉じた。
眠った彼女に気付かれないよう、
「…いい夢、見れますように…」
そう言って、もう一度鼻の頭に短いキスをする。
月あかりが彼女と俺の洋書を優しく照らしている。
「…安心した顔で寝やがって…」
つーか、
母さんの「おまじない」、
やっぱ すげぇ効くのな。
end