Kiss in the dark

□11
1ページ/1ページ



 村長が去ってから、二人の間には距離が出来、近ず離れずの間を保ちながら、目的地へ向かっていた。

『ナナコ。報告を』
「……」
『ナナコ?』
「あ、はい……。USBメモリーらしき物はみつけました」
『今手元に?』
「いえ。ラスボスっぽい…じゃなくて村長が腰にぶら下げていて。見た目はただの食品サンプルのキーホルダーでした。ほら、日本の匠というか、外国人には食品サンプルが人気でしょう?物珍しさで奪ったんだと思います」
『それくらい単純だといいんですが…』
「?」
『メモリーを早く回収してください。子息は…』
「あと、なんですよね?わかっていますけど、この村、すごく異様です。人命を優先させた方が」
『駄目です』
「っ」
『次こそはいい報告を』

 なぜ、それほどまでにUSBメモリーにこだわるのか。人命より大切な物があるのかと思うが、ペペはただ上の指示通りに動いてるだけで。ペペに八つ当たりするのはお門違いだ。しかし行き場のない、モヤモヤとした気持ちはどうしようもない。ナナコは、苛立ちを木にぶつけた。

「ナナコ」
「はい。どうしましたか?」

 引き止められたことを怒っているのかとレオンは聞く。
 村長にナナコが敵うわけがない。もしそれが何か知らずに持っているとしたら、ナナコの行動は裏目に出て、任務は更に困難になるだろう。
 頭の中が目の前のUSBメモリーを確保することで、いっぱいになっていたが、落ち着いて考えてみればレオンに止められて正解だ。レオンの問いかけに首を横に振る。

「いえ、レオンさんには感謝してます。貴方がいなかったら、私死んでました」
「………人捜しをしてる、と言っただろ?」
「はい」
「娘が見つかったら、君もヘリに乗るんだ」
「えっ…」
「……。こんな状況だ。君の親戚とやらも、もう…」
「あ……。そうですよね…」
 
 親戚を訪ねにきて、謎の事件に巻きこまれてしまった女子大学生だと思っているのか。 レオンに言われて、自分はそういう「設定」だったと思い出す。肯定も否定もせず、笑ったナナコに、レオンの表情は険しくなった。

「レオンさん?」
「いや。先を急ごう」


 再び村に戻り、奇妙な紋章の刻まれた扉を手に入れた鍵で開けて。地下から再び地上に上がると、前方には墓地。小走りでレオンとの間を詰めた。

「ナナコ#?」
バサァ
「ひっ…」

 烏が羽ばたいただけで大袈裟に反応する体。心なしか顔色も悪くなってきた。

「今更になってゴーストが怖いとかいうなよ?」
「そ、そんなことっ。きゃぁぁ!!」
「っ!?」

 足元を伝うヌルッとした感触に、反射的にレオンにしがみ付く。

「あ、あ、あしにっ」
「ナナコ。落ち着くんだ。こう引っ付かれると、見れないだろ?」
「ひゃぁぁ!ふ、太腿にっぃぃ」

 ズルズルと上に這い上がってくる、何か。パニックになっているナナコはどんなに強く押しても離れない。緊急事態だと自分に言い聞かせ。レオンはスカートを引き上げ、太腿の内側に手を伝わせる。視線は下にいかないように遠くを眺め。滑らかな質感とは違う、粘着質な突起が指先に触れた。
 ナナコの生足(絶対領域)を堪能したであろうナメクジは、レオンの手によって投げ捨てられた。

「な、何がついてましたか?」
「虫だ」
「本当に?虫ですか……あのヌメッとした…ひぃぃ。思い出すだけで鳥肌がっ」
「ナナコ」
「はい」
「外でするのが好きなのか?」
「っ!!」

 野外プレイがお好みですか。正しく訳せばこんな感じ。英語と日本語の間を行き来し、レオンが言ってる意味を理解したナナコは飛び退く。レオンが手を抜いた際に、おりているがスカートを押さえつけ、茹蛸も顔を真っ青にするほど。ナナコは全身を真っ赤にした。

ご、ごめんなさい///」
「別に。むしろ俺は美味しい思いをさせてもらった」
「っ!!そういうことはっきりと言わないでくださいよ!!」
「初だな」
「貴方と私を一緒にしないでください!!」



右足にあるブツを忘れていた…

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ