番外編

□両手に華でもいいじゃないですか
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「川澄さん、雪村君。」



天気の良い昼下がり、縁側に腰かけて談笑する二輪の華を見つけて声を掛ける。


『島田さん。』

「丁度よかった二人とも、団子を食べないか?」

「わぁ、お団子ですか?」
『頂いても良いんですか?』



団子と聞いて顔を綻ばせる二人。



「お二人と食べようかと思って買ってきたんですよ。」



懐から少し大きめの包みを出して見せるとその顔を更に緩める。

お茶を入れてくると立ち上がる雪村君を見送り、暫し川澄さんと二人で他愛もない話をして時間を潰す。
















『「おいし〜い。」』



溶けそうなほど表情を緩めて団子を頬張る二人を見ていると、所用ついでに買ってきた甲斐があるとこちらまでつい顔が緩んでしまう。
甘いものは、一人で食べても美味しいがそれを分かち合える誰かと食べるのがまた格別で
基本女性は甘味と言うものが好きなのだろうけど、この二人…とくに雪村君は自由に外に出られない身の上の為こうして何かを買ってくると兎に角嬉しそうに、そして美味しそうにそれを食べてくれる。



「それは良かった。」



隊士でも甘いものが好きな者は少なくは無い。
特に沖田さんなんかは大の甘いもの好きだとは知っているが…
彼の性格と言うか雰囲気と言うか…共に並んでそれを食べる仲かと言われたら全くそうではなく、そうする気にもならない…
つまり、苦手なんです。俺が彼を…



『こうして屯所でお団子食べるのも美味しいけど、たまには外に出て色んなお店の色んな甘味食べて見たいですね。』

「そうですね。甘味巡り…わぁ、絶対楽しそう!」



不意に川澄さんが口に出した言葉に同意して、更にはそれを想像してかキラキラとした表情を浮かべる雪村君。
本当に甘味が好きなんだとわかると共に、やはり自由に外に出歩けないが為の憧れ…
年頃の女性だ、本来なら仲の良い友達と暇を見つけてはそんな店に出掛けても可笑しくは無いのに…



「でも、土方さんが許してはくれないですよね…」

『あ〜…、まぁ…私たちこの前二人で出掛けてやらかしてるしね、多分はじめさんも許してはくれない…かな。』



しかし、結果それは難しいだろうと諦めを含んだため息を漏らした雪村君を見たら思わず…



「では、今度の私の非番の日に三人で出掛けましょうか?…甘味巡り。俺が一緒なら副長も許可をくれるでしょう?」



そう口に出してしまう。



「えっ?」



途端に驚きの表情を見せる雪村君。続いて…



『…せっかくの非番に悪いですよ、監察は一度忙しくなると休みなんて無いようなものなのに…』



川澄さんも申し訳無さそうに口を開く。



「しかし、行きたいのでしょう?俺も可愛らしい二人と出掛けられるなら非番も友好的に過ごせますよ。それに…一度やってみたかったんですよ、甘味巡り。」


やんわりと笑って見せると、二人は目を見合わせてどうしようかと視線で語り合っているのが分かる。気を使っているのだろうけど…



「私のこの成りではね…どうも恥ずかしくて一人では行けないんですよ。出来れば付き合ってはくれませんか?」

「えっ、あっ…」

『……』



最後の言葉に雪村君は明らかな同様を見せて、川澄さんはどうやら俺が一人で甘味巡りをする様を想像したらしく必死に笑いを堪えている。

そして次にはまた二人で目を見合わせてお互いに微笑んだ後



『「是非、お供させて下さい!」』



はっきりとした口調で明るい返事を返してくれた。



『クスクスッ…じゃあ今度の島田さんの非番には三人で甘味巡りデートですね。』

「でーと…ですか?」



不意に川澄さんが口にした知らない言葉…未来から来たと言う彼女はたまにこうして異国の言葉等を使うが…
それに反応した雪村君が不思議そうに首を傾げながら問いかけると



『ん?あぁ、そっか…デート…ん〜こっちで言うと…逢い引き…かな?違うか?』



考えながら口に出した答えが私たちには少しばかり衝撃的で…



「……」

「……」



今度は俺と雪村君が思わず顔を見合わせてしまった。


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