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□第三十四話連休前日
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「土方さん、終わったぜ!!」

「ん、あぁ。何とか連休前には済んだようだな。」

「一日余裕できたな!一時はどうなることかと思ったぜ!」

「そりゃぁ、こっちの台詞だ!」



お盆休み前日の始業時間ぎりぎり、このままでは休み返上で働く羽目になると土方さんに脅されてやっと平助と新八が本気を出し始めたのが僅か一週間前の事。
数日前には本当に脅しではなく休日返上になりそうだとオフィス内の誰もがそう感じでいたはずなのだが



「見たか、俺の本気を!やれば出きる男なんだよ俺はよぉ!」



それを何とか…今朝も珍しく始発で来ていたと言う新八が連日周りに助けられながらそれを期限内に終え、今こうして吠える男を見て深くため息を吐く土方さんがあまりにも哀れになってくる。
やれば出きるのであれば何故その本気をもっと早く出すことは出来なかったのだろうか?



「ばか野郎!!下らねぇこという前に毎日文句言わずに手伝ってくれた斎藤と川澄に礼をするのが先だろうが!」

「いえ、俺は…」

「そうだよな。サンキューな斎藤。…っと、尊ちゃんは今日は休みだったか?」

「風邪だっけ?新八っつぁんが人使い荒いから体調崩したんじゃねぇの?」

「お前が言うな平助!」



新八の一言に皆、普段はそこでどんな仕事も文句を言わずに小さいながらもスッと伸ばした綺麗な姿勢で情報処理をこなす…
今は寂しくも主の居ないデスクに視線を向ける。



「何だか寂しいな…明日から連休でしばらく顔も見れないし。」

「あれか?尊ちゃんはイベント前に体調崩すタイプか?この前の社員旅行の時もそうだったし。」



社員旅行前日に尊が会社を休んだ本当の理由を知らない新八がまた発した言葉に、今度はデスクから視線がその新八に向けられ会話が続く。



「そう言う新八っつぁんは遠足とか運動会前は興奮して寝れないタイプだろ?」

「バァカ、新八がそんな繊細な神経してる訳ねぇだろ?」

「あっ、そっか…」

「そっかじゃねぇよ平助!」

「おい、いつまでも下らない話してんじゃねぇぞ!もうすぐ始業時間だ!」



しかし、その会話が長く続くこと無く
土方さんの一喝に今度は各々が仕事を始める支度に取りかかり始める。



「おはよぉ…」



そこへいつものように開始ギリギリで総司が出社してきて…



「総司、てめぇ良い度胸してるじゃ…」

「あれ?尊ちゃんは?」



直ぐ様いつもは誰よりも早く出社して既に仕事を始めているはずの人物が居ないことに気がつく。



「人の話を最後まで聞きやがれ!おい、総司!俺は昨日何て言った?」

「やだな、土方さん。土方さんが昨日何を言っていたかなんて一字一句覚えていられるはず無いじゃないですか?何より土方さんの話すことなんて何時も聞き流して聞いてないし。」

「おちょくんじゃねぇ!昨日の終業間近俺が何て言ったかを気いてんだよ!」

「冗談ですよ。いちいちうるさいなぁ…あれでしょ?新八さんたちの仕事が終わりそうに無いから出きれば朝早くから来て手伝ってやれって言う…」

「ちゃんと聞いてんじゃねぇか!」

「聞いてはいますよ?」

「それで何でこんな時間に出社してきてんだよ!?」

「えっ?だって土方さん出きればとか言ってたし、そもそも終わらないのだって新八さんや平助が悪いんであって僕の責任じゃないし…まぁ、強制って言われても多分来なかったけど。」

「テメェ…」

「総司、お前は昔からそう言うやつだよな…」



その非情な発言に新八と平助が項垂れたのなど気にした様子もなく、「で、尊ちゃんは何で居ないの?」と坦々とした様子で会話を続ける総司。



「風邪だとよ!」



それに対して土方さんがわざわざ返答したにも関わらず



「ふ〜ん…風邪ね。後で連絡してみよう。」



礼を述べる事無く、一人呟きながら自分のデスクへと腰かける。

そして今度こそ始業開始のベルが鳴り…
それと同時に女性社員たちがやっとで出社してきた。



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