番外編
□兄でも弟でも美味しいことには変わりない
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「ねぇ、尊ちゃん最近元気なくない?」
「!!?」
今まさに、自分が考えていたことをそのまま口に出した総司の言葉を受けて
「喧嘩でもしたの?はじめくん?」
「い…や……」
明らかな動揺を隠せずにいた。
会合…と称した飲み会で、程よく酒が回り始めた幹部たち。
場所が場所なだけに尊と雪村は屯所に残して来たのだが…
「俺も思った!何か尊最近ため息多いよな?」
「何だ平助?お前、女のため息なんて気にするほど成長出来たのか?」
「うるせぇよ!新八っつぁん!」
先程まで別の話題で盛り上がっていたはずの平助達が、どうやってこの騒がしい室内で総司の一言をその耳で拾ったのかは分からないが
了解も無く俺達の会話に参加しはじめて、ついにはこの室内全ての人間がその話題に興味を持ちはじめる。
「何だ斎藤、痴話喧嘩か?」
「いえっ、決してそのようなことは…」
「いいや、お前はこういうことに関しては鈍感だからな。知らずに尊を怒らせたのかも知れないぜ?」
「−っ!」
左之が口に出した言葉はいつも自分自身が気にしていた事で…口下手で思ったことを口に出すことも行動する事も余りしてやれず、知らずに怒らせたり…最悪、いつかは愛想をつかされてしまうのではないかと…
考えない日など無いのだ。
「……」
そんな尊が…いつからだろうか?
俺が気付いた時にはもう、ふと考え込んだりため息を付いていたり…庭先で空を見上げる憂いた表情
あれは…
「龍は?なんか思い当たること無いの?」
「ん〜?」
その時…新八に無理矢理この飲み会に連れて来られた龍に、平助が「何か」と問いかけてみるが。
答えなど最初から分かっていると言わんばかりの嫌な笑みを浮かべて
「愛情不足じゃない?」
なんて答えるものだから
「…斎藤。」
室内全ての注目を俺が受けることとなる。
勿論その中には俺に対して哀れみを帯びたものもあって…
「……」
まかさ…と思いながらも、いや、無くはないと悲しい話…自分の中で何処か納得し出した時
「あっいや、ごめん…そっちじゃなくてね?」
「?」
慌てた様子で付け加える龍。
「足りてないのは兄弟愛の方ね。」
「はぁ?」
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