番外編

□あらぬ誤解は更なる誤解を呼ぶ
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「ねぇ、はじめさん一緒に寝よう?」



断りもなく部屋に入ってきた龍がまず第一声に放った言葉。
またか…



「今度は一体何があったのだ?」



以前蕎麦屋の女子に振られてから一人寝は寂しいと言うので暫く一緒に寝てやったこともあるが…
それ以降も何かと理由を付けてはこうして俺の部屋に押し掛けてくる。

理由は様々。


寒くて眠れないだの、怖い夢を見ただの…



「新八さんが昼間に怖い話するから…」



了承もしていないのに、勝手に布団の上に座り持参した枕を抱いてため息を吐く龍。


ため息を吐きたいのはこちらだ。



「一体幾つになったのだ!第一、いつも言っているが同室の隊士がいるだろう!」

「平隊士じゃ頼りない…はじめさんじゃなきゃやだ。」

「……」



一体どれ程恐ろしい話をされたのか…
自分よりも遥かに図体のでかい男がダダをこねている。
普通だったらまず可哀想とも思わない所なのだが…

二つしか歳の違わないこの愛しい女の弟には…どうにも弱い斎藤。



「風呂に入るのもおっかなかったしさぁ…」

「それでも入ったのだろう?」

「入ったよ、尊と。」

「……」



今、何と言った?



「え?どうしたの?はじめさん?」

「誰と風呂に入ったと?」
「……尊と。……え?はじめさんも一緒に入りたかった?ごめん、次は誘うね。」



そういう問題ではなくて…

全く、尊も大概龍には甘い!人の事は言えないが…

だからいつまでたってもあまったれているのだ。未来ではどうか知らんが、この時代でこの年の男がいつまでたっても夜一人で眠れない等と言うことはまずありえ無いのだ。



「いいから、今日は部屋に戻っ…」

「やだ、大部屋男臭い。囲まれるならはじめさんか女の子が良い。」

「……」



そっぽを向いてそう言う様は本当に見た目に似合わず子供のようで…
いやいや、今回は本当に心を鬼にしなければ!
別に、尊と風呂に入ったことに妬いてある訳では無いが…



「いつまでもそうも言ってられないだろう。」

「はじめさん俺と寝るの嫌?」



いつもの子犬の瞳で見つめて来る龍。
嫌と言うか…
いや、今回は心を鬼に…



「迷惑?」

「……」



迷惑と言うわけでは…
駄目だ!心を鬼に…



「邪魔?」



いや、邪魔と言うより狭いだけたのだが…
いやいや、今回こそは心を…



「……お兄ちゃん。」

「−っ……」



鬼に…



「今日だけだぞ…」



なりきれなかった。

俺もやはり、大概こいつには甘い…



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