番外編

□寝ても覚めても似た者カップルということ
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『……?』



夜も更けた屯所内…右も左もどこもかしこも皆寝静まり、暗闇と静寂だけで包まれる中

何時ものように遅めの風呂に入り、何時ものように寝る支度を済ませて…いつもならまだ起きている人の気配がするはずの、今は誰の気配も感じられない隣室を一度眺めてから布団に入り込んで暫く。


どれ程時がたったのかはわからないが、まだ夜明けは迎えていない真っ暗な部屋の中で誰かに呼ばれた気がして目を冷ます尊。



『……』



気のせいだろうか?室内に人の気配はしない。
まだ慣れない目で見ることは出来ないが、隣室へと続く襖の方に視線を移してもやはりその向こう側から人の気配がすることはない。


『はじめさん?』



しかし、自分を呼んだのは確かにその部屋の主である斎藤だった気がして身を起こしてから考えて暫く…

立ち上がったは廊下へと続く襖を静かに開けてみる。



『!!……はじめさん?』


開けたとたん…何時も見えるはずの景色は見えず、代わりに更なる暗闇と重さと…
そして暖かさが自分を襲い、のし掛かってくるそれを不意打ちながらも何とか支え…


きれずに地面に膝をつける。



「今、帰った…」



酒のせいか掠れた声でそう言う斎藤はこの状態でどうやってここまでたどり着いたのか?
最早、自分自身を支えることが出来ない足を完全に折りその全体重を尊に預けてくる。



『はじめさん…重っ!』



周りに比べると小さい方だとは言ってもやはり男。それよりも更に…未来でいっても平均以下である身長の尊がそれを支えるのは容易な事ではない。

それでもなんとか…意識すらあるのか無いのか分からないその力無い体を引きずり、今しがたまで自分が寝ていたまだ暖かい布団の上に屈んだ状態から放り投げる。



『はぁっ、はじめさん…飲み過ぎ!』

「…すまん。」



独り言のつもりで呟いた言葉に意外にも返事が返ってきて驚きはしたが…それよりも、両腕を額の上で組み少しばかり具合が悪そうに顔をしかめるこの男にため息しか出てこない。



『今、水持ってくるから待っててください。』



癖のある柔らかな髪を一撫でして立ち上がろうとする。

しかし、その腕を捕まれたかと思うと伸びてきたもう一方の手で頭もを引かれて…
きつい日本酒の匂いが染み付いた着物に顔を埋めることとなる。



「いい。ここに…」

『……』



ここに居ろ。多分そう言いたいのであろう斎藤の言葉に従い暫く…酒のせいかいつもより速く刻む鼓動を聞いていると…



「スー…」



頭上から静な寝息までもが聞こえてくる。



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