新荒

□Good Luck
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*荒北said*

追い出しレースも終わり、箱根学園自転車競技部は世代交代をした。
きっと、俺達が犯した『王者』の肩書きに傷をつけたことはいつまででも語り継がれてしまうのだろう。
次は、泉田達の代だ。きっとあいつらが『王者』を奪還してくれるはずだ。
俺達はきっとこのまま大学に行って、またペダルを回すのだろう。そう思っていた。時が少し狂ってしまうまでは――…



「なぁ、靖友。実は……」
木枯らしの吹く寒い日のことだった。
「靖友の事が好きなんだ」
寒いのか、それとも恥ずかしいのか、頬を赤らめた新開が言ってきた。
「……」
男だろ?俺達。とでも突っ込みをいれるのが普通なのだろうが、そんな事は思考回路がストップして全く浮かばなかった。
「靖友、俺と付き合ってくれ」
「……」
こいつなら、誰とでも付き合えるだろう。女なんか近くに沢山いるのになんで俺なんだ?という疑問しか浮かんでこなかった。
「いいか??」
「別にィ……」
生憎、こいつの事は嫌いじゃない。どちらかといえば好きな部類に入る。
「本当か!?靖友!!」
「アァ、本当ダヨ」
男と付き合ったって別に何も感じない。
「じゃあさ、靖友。俺の願い、聞いてくれるか??」
「何でもドーゾ」
別にろくな願いじゃないだろう。そう思っていた。
「俺と××××」
一瞬耳を疑った。こいつがそんなこというやつだと思ってなかったからだ。
「ハァ?もう一回言ってくれ」
「心中しよ」
やっぱり聞き間違えじゃなかった。
「お前バカァ??」
この時代に心中なんて意味の無いことを……。
「俺さ、おめさんと結ばれたいんだ。別に死んだっていい。おめさんが一緒なら……」
本当に馬鹿げた事をいうやつだ。
「ハッ!しょうがねぇー奴だな。乗ってやるよ」
こんな返事をした俺はもっと馬鹿げた奴かもしれない。
「靖友……」
いきなり身体を引き寄せられ、ぎゅっと抱き締められる。
「さっきのやつさ、結婚しようって意味であってンだよな??」
「あぁ!!」
もさもさしていて柔らかい新開の髪がすぐ横で暖かさをだす。
「どこで……、どうやってするきだよ……」
痛いのはイヤだ。
「寮……。ダメかな?」
「どうやってやんのヨ??」
「毒……」
それって苦しいんじゃねぇのか??
「チッ、わかったよ。で、いつやんの??」
「一週間後は?」
一週間後ってそりゃ急だな。
「あ、ま、とりあえずそんなんでいいなじゃない??」
「よし!!じゃあ、今日は指輪買いに行こうぜ?」
「はぁ??」
指輪って……。もうここまできたら、あきれるとか通り越して、本当に『愛されてんなぁ』としか思えなかった。
「行こう、靖友」
「はぁ」
新開に手を引かれる。誰も見ていないかと後ろを振り返ると、黒田が見えた気がした。
 何故だか、この頃黒田のことが気になってしょうがない。きっと最近一緒に練習してるからだろうか?変なきの迷いだ。
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