新荒

□Good Luck
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 あっという間に一週間が経った。あの後、結婚指輪と称したおそろいの指輪を新開が買い、俺に付けろと渡してきた。おかげで、薬指には新開とおそろいの指輪がキラキラと光っている。
「靖友、これに名前書いて」
「あぁ?」
新開が手に持っていた紙には、緑色の文字で『婚約届け』と書いてあった。その紙には、新郎のところにはしっかりと『新開隼人』と書かれていた。
「指輪だけじゃなくて、この世にしっかりとした結婚の証をのこしておきたいんだ」
こいつは……。俺はとんでもないやつに愛されてしまったのかもしれない。
「ん」
俺は、こいつの手から紙を受け取り、『荒北靖友』としっかりと書いた。
「はいよ」
「ありがとう、靖友」
ニコッと笑った新開は、紙を机の上に置いた。
「靖友、これ」
新開からコップを渡された。おそらくこれが新開の言う『毒』というものだろう。
「これを……、飲むんだよな」
「あぁ、そうだよ。そうだ、発見者は尽八になるように10分後にきてもらうようになってるから」
「わかったよ」
第一発見者は東堂か。まぁ、福チャンじゃないだけましだな。
「それじゃ、飲もうか」
「あぁ」
「あっちで幸せに暮らそうな」
『カコン』
二人でグラスをぶつけ、一緒に飲んだ。
 半分ほど飲んだところで、なんだかクラクラした。
『バタン』
座っていることができずに床に倒れる。
『バタン』
隣の新開も倒れた。
 少しずつつらくなってきて、目を閉じる。この期にもおよんで、脳裏に浮かぶのは黒田のことだった。もしかしたら、俺は黒田のことが……。いや、そんなわけないか。
 東堂が来るのをゆっくりと待つ間、色々なことを考えた。
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