大伴一志の章

□第7章
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例え互いに恋人が出来ても私達の関係は変わらないと思っていた。

普通に話もしてメールや電話はすると思っていた。

登下校は別になるのかな...くらいにしか考えてなかった。

そんな保証はどこにも無いのに。

はぁ…

ため息しか出ないなぁ。

嫌だな、教室で待ってても落ち込むだけだ。

ちょっとフラッとして来ようかな?

そう思って私は教室を出た。

すると丁度、一志が隣の教室から出てくる。

「あっ…」

もしかして話せるチャンスなんじゃ...

少し美和との事、聞きたい。

そう思って私は一志に声をかける。

「かず…」

美和「一志!」

すると一志の後ろから美和が飛び出して来た。

あ、そっか。

そうだよね......

今は美和の彼氏だもん。

そういう事、だよね。

私の気持ちが急激に冷えていく。

美和「一志、待ってよ〜」

そう言って美和は甘える様に一志の腕を組んだ。

一志「はぁ…お前がトロいんだろ?」

美和「少しくらい優しくしてよ!」

一志「はぁ…」

一志は面倒くさそうにため息を吐くと美和の頭をくしゃりと撫でた。

あっ...

そして二人は自然な動きで互いの手を絡ませて手を繋いだ。

美和「駅前のアイスクリーム屋さんに行きたい!」

一志「部活、終わってからな。ってかお前、そんなんばっか食べてると太るぞ?」

美和「いいじゃない!あそこのアイスクリーム美味しいんだもん。」

二人は仲良く階段へと消えていった。

二人はどっからどう見ても恋人同士で私が入る隙なんてない。

そんなの分かってる。

でも、ついこの間までは一志の隣は私が居たのに…

違う!!

一志はもう、“私の幼馴染”じゃないんだ。

“美和の彼氏”なんだから。

私は自分の気持ちに蓋を押し付ける様に自分に言い聞かせる。

一志の見たことない顔...

美和にだけ見せる顔...

何でこうなっちゃったのかな?

どこかで道を間違えたのかな?

何で私じゃなくて美和なの?

私と美和のどこが違うの?

嫌だな、こんな自分・・・

大切な友達と一志の幸せを願えないなんて。

そう思ってはみても、後から湧いてくるのは苦しい嫉妬と自分だけを見て欲しいという浅ましい恋慕だけ。

ほんと、嫌になる。
友達に嫉妬なんて。

そう思って現実から目を背ける様に顔を伏せた。

私はこんなに嫌な人間だったんだ。

私は静かに教室に戻った。








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