大伴一志の章

□章間〜前夜〜
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キィ。

私がベランダで項垂れていると後ろからドアの開く音が聞こえた。

一志「こんなとこに居たのか。」

振り返ると一志もベランダに出て来た。

「うん...」

さっき皆で話をした時、結局、夢の事は話せなかったな。

何となく...。

皆の期待を裏切ってしまう気がして。

あれはただの夢じゃないのは分かってるけど。

そう思いながら一志の顔をジッと見つめる。

夜刀は、『禍津神はカガリの魂を取り込んで、それを夜刀が守ってる』と言っていた。

『禍津神は己の力の片割れである、一志を探してる』って...

片割れって、一志の中に禍津神の力が眠ってるって事?

私は一志にそんな力があるとは思えない。

皆はどうなんだろう?

今は夜刀が守ってるから、禍津神の力が抑えらてるの?

禍津神の力が一志にどういう影響を及ぼしているのか、これからの戦いでどうなるのか、全く検討もつかない。

とにかく、私は一志の側を離れない様にしなくちゃ。

今度は私が守る。

すると私の横に立った一志が言った。

一志「怖いか?これからの事...」

一志は私を心配そうに見る。

「うん、少し。でも大丈夫。皆が居るから。」

そう言って私は一志に笑って見せた。

一志「無理、するなよ?」

「うん。一志はもう怪我は大丈夫なの?」

一志「もう何ともない。あれから3日経つからな。お前こそ大丈夫なのか?」

「本当に私は何でも無いよ?」

一志「さっきも言ったけど、夜刀は元々は荒魂だった 。」

「でも伝承でしょ?」

一志「伝承と言えど侮れない。その伝承の内容に近い何かはきっとあったのだと思う。夜刀は普通の人間が触れれば無事で済まない。人の魂を喰らう呪われた剣なんだ。」

そう言われて夢で会った夜刀を思い出す。

その様な危険なモノには見えなかったけど...

一志「そんな剣を手にしても無事だったんだ。宗史の言うとうり朋美の力は増しているんだな。」

「そうなのかな?あんまり実感はないけど。」

私が一志を見上げるとポツリと言った。

一志「朋美、何があっても自分の信じた道を行けよ。」

「な、何?突然どうしたの?」

一志「ん...?何となく、そう言いたかった。」

そう言って一志は私が自分の胸に埋まる様に優しく抱き寄せる。

まだまだ暑い夜だけど、こうやって抱きしめられるとやっぱり温かい。

一志の匂いがする...

一志「俺が守ってやるから、お前の全てを。お前の望む世界を守ってやるから......」

一志は私を更にギューと抱きしめる。

何か変な一志...。

どうしたんだろう...

私が倒れたのがショックだったのかな?

私は一志に安心してもらいたくて、ギュッと抱きしめ返す。

「一志も無理しないでね。それから何かあったらちゃんと話して?」

一志「...ああ、分かった。」

そのまま私と一志はしばらく互いの温もりを確かめ合っていた。

お互いの存在を確認するかの様に−−−

本当はこの時、気づけば良かった。

一志の抱えるモノに。

私はまだ自分の事しか見えていなかった。








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