大伴一志の章

□章間〜雨の降る町〜
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私と浩輔は急いで東京へと戻ってきた。

蒼碧寮−−−

「裕生くん!」

裕生「朋美、浩輔。」

蒼碧寮では裕生くんが待っていてくれた。

浩輔「宗史は?」

裕生「巨樹を見に行ったよ。」

電話で呼び戻された私達は急いで新幹線に乗って東京へと戻った。

途中、横浜辺りまで戻ってくると空が暗くなり、東京に近づくにつれ段々と真っ黒になっていった。

八重洲南口に近づくと、冷え冷えとした生温い不気味な風が吹き荒れ、只事じゃ無い事は直ぐに分かった。

そして一番驚いたのは、南口を出ると天まで昇りつめる巨大な樹が目の前に存在していた事だ。

私達はそれを見るまでは“だんだん天気が悪くなってきたなぁ”と思っていた。

けれど、その黒い空は巨樹の葉の部分だったのだ。

しかも、その巨樹が見えているのは私達だけみたいで誰も気にも止めていなかった。

それから私達は、東京駅に迎えに来てくれた葛城家の運転手さんに蒼碧寮まで送ってもらった。

「あれは禍津神のせいで現れたの?」

裕生「宗史はそう言ってた。しかもあれは封樹の幻影じゃないかって。宗史はそれを確かめに行った。」

浩輔「くっそ!!何でこうも後手後手なんだよ!」

「浩輔...」

浩輔は苦虫を潰した様な表情で話を始めた。

浩輔「禍津神の本体は一志じゃない。」

「えっ?!」

浩輔「ああ〜、いや、もちろん一志自身も禍津神だ。けど、あの巨樹こそが禍津神の大元...とでも言うべきか...」

裕生「どういう事?」

浩輔「つまりは一志も巨樹も禍津神も同一の存在なんだ。」

「え...?」

浩輔「そして、あの巨樹は元々は封樹。」

「封樹?...だって、封樹はあの洞窟の崩壊で壊れたんじゃ...?」

浩輔「確かにあの封樹は洞窟の崩壊で役目を終えた。けど、あの巨樹は過去の封樹たちなんだ。」

「それってどういう事?」

浩輔「巫女は四神器を身に纏い三宝を捧げ封樹に禍津神を封じてきた。けど、それには限界があって一つの封樹の役目はだいたい500年の周期で終わる。例えばコップに水を入れ続けると水が溢れてしまうように、封樹にも封印出来る限界があるからなんだ。」

浩輔は一つ一つ思い出す様に話してくれる。

浩輔「今の封樹が役目を終えれば次の新しい封樹へと封印をする。けど、過去の封樹の中には、次第に浄化仕切れない無明と魔に飲み込まれ、禍津神そのものになってしまった封樹もあった。」

「そんな...」

初めて話される浩輔の話に私は唖然とするしかない。

浩輔「禍津神は本来、力の根源。だからそこに在るだけで姿形はない。おそらく禍津神と化したものたちの姿を模しているんだ。あの巨樹も一志もその姿の一つ。」

裕生「じゃあ、探しに行っても無駄って事?」

浩輔「そうだ。姿として見えるけど捉える事は出来ないだろうな。」

その話を聞いて私はふと、前に『禍津神は厄災の力の根源。姿、形はなく本能のままに動いているだけ。そして巫女の力とは本来、誰の生命(いのち)にも宿るもの...』っと夜刀に言われた事を思い出した。

裕生「すぐに宗史に連絡しよう。」

裕生くんがそう言ってスマホを取り出し、連絡をする。










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