螺旋の森

□章間〜大伴一志の章〜
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〜一志視点〜

毎年4月に俺たちの住む葦津町ではお祭りが行われる。

3日間にかけて行われ、普段は静かな町もこの時ばかりは賑やかだ。

初日に海側と山側の神社の神輿を入れ替え最終日に元に戻す。

二日目には花火大会が行われ、なかなか盛大なお祭りだ。

俺は毎年、地元の仲間と祭りに参加している。

今年ももちろん、仲間と連んで行く予定だ。

仲間と言ってもこの町では子供が少ない。

だから必然的に皆が仲間になる。

待ち合わせは毎年恒例で海側の神社の境内の階段下だ。

友A「おい、一志!」

待ち合わせ場所に着くと既に友人二人が来ていた。

友A「久しぶりだなぁ。元気だったか?」

友B「そういや、新聞見たぞ。弓道でまた全国に行くんだってな。」

高校の違う友人と久しぶりの逢瀬を楽しむ。

俺と朋美の通う高校は皆より遠く電車の時間が皆より早い。

俺も部活があったりで中学の時みたいには友達とも会わなくなっていた。

友A「そういや朋美 は何で今日、来ないんだ?」

一志「......え?」

俺は朋美が来ない事に驚いた。

しかもそんな話は初耳だ。

俺はいつも一緒に祭に行っていたから今年も来るものだと思って別に確認もしなかった。

友B「俺、てっきり一志と何かあったんじゃないかと思ってた。」

友A「確かにお前らいっつも一緒に居たしなあ。」

一志「何かって何だよ?」

友B「いやぁ、例えば付き合ってたけど別れたとか、喧嘩したとか。」

一志「…………」

はあ、またその話か。

俺と朋美に“付き合ってるんじゃないか”っという噂がある事は知っている。

大抵一緒にいるし仕方ないとは思うがあんまり言われると少し複雑だ。

友B「お、怒るなよ〜。」

友A「そういやお前ら一緒に学校に行ってるんだろ?俺の母ちゃんが見たって言ってたぞ。」

一志「まあな。」

俺は否定する気も起こらずそう返事をした。

友A「相変わらず、仲がいいんだな。」

友B「お前ら本当に何にもないのか?あんだけ一緒に居て何も無いのか?」

友人達は興味深々に聞いてくる。

高校生にもなれば男女関係なく、そういう話で盛り上がる。

俺は何となく、苦手だ。

一志「…何かないと駄目なのか?」

俺は疑問に思って聞いてみた。

友A「いや、そういう訳じゃないけど、彼氏とか彼女とか欲しいだろ?」

一志「俺は興味ないな。」

俺は早々に話を切り上げたくて素っ気なく答える。

友A「お前がなくても朋美は彼氏、欲しいんじゃないのか?」

そう言われて俺はドキッとする。

友B「俺はお前らいいと思うけどな。」

友A「因みに俺は出来たぞ。彼女。」

友B「何!?誰!誰!?」

盛り上がっていると女子がやって来る。

友C「お待たせ〜。」

友D「ごめんごめん。家を出る時にお母さんに頼まれ事されちゃって。」

女子二人はすまなそうにやって来た。

友B「おい、こいつに彼女出来たんだってよ。」

友C友D「え〜!!嘘ぉ!」

今度は女子二人を交えて盛り上がる。

けど俺はそれには混ざらず、一人の女子に朋美の事を聞いてみた。

一志「おい、朋美は何で来ないんだ?」

友C「ん?なんか妹の浴衣の着付けやるんだって。終わったら来れば?って言ったんだけど、調子も良くないみたいで。」

一志「調子……?」

友D「うん、そう言ってたけど?」

女子は俺が知らない事が意外そうに答えてくれる。

ふと俺の隣にいる友達が話始めた。

友A「朋美、あいつ凄いよな。」

友B「朋美の母ちゃんが死んだのいつだっけ?」

友D「小2の時だったよね?」

友A「それからずっと家の事やってるんだろ?」

友B「俺、朋美の事尊敬する。」

けど、俺はそんな会話も聞こえず、ただ朋美の事が心配だった。










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