螺旋の森
□章間〜藤浩輔の章〜
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〜浩輔視点〜
二人を見送った後、俺は部屋に戻りベッドに横になる。
目を閉じるとふと朋美の顔が浮かぶ。
真剣な顔、落ち込んだ顔、怯えた顔、ホッとした顔、笑った顔ーー
出会ってからの短い間で色んな顔を見た。
どれも朋美なんだと思った。
ササギじゃない、“朋美”なんだと。
ーーササギは静かな人だった。
ササギはいつも静かに笑みを湛え、滅多に表情が変わる事はなく、淡々と物事を見て考え行動していた。
きっと最後の時にもそうしていたに違いないーー
最後の時ーー 俺は集落にはいなかった。
俺は神護りの祭りの時、部族の任があり集落を離れていた。
任務が終わったのは祝祭の後で、戻るとササギはいなかった。
そしてカガリも...
集落の人間に聞いたら、「カガリと旅に出たみたいだ。」っと言われた。
けど俺はその言葉に疑問を持っていた。
きっと二人は何かしらの理由で集落を追われたに違いない、そう思っていた。
その真実を知っていたのは夜刀族の首と神護りの首、巫女に近い一部の人間と、それからカガリ、ササギ本人だけだ。
何故、カガリとササギは消えた?
何故、ササギは消えた...?
神護りの祝祭は滞りなく、行われた様だ。
きっと一志は知っている。
さっき、朋美の『何故ササギは巫女じゃないのに狙われるのか?』の問いに詰まっていた。
おそらくそこに何か理由がある。
その後、戦で神護りの集落は亡んでしまった。
もちろん神護りの一族も夜刀族も俺たち蘇我一族も……
その時俺はーー
コンコン。
俺がうとうととしていると多川が俺を呼びに来る。
多川「失礼します。坊ちゃん夕餉の時間でございます。」
浩輔「分かった。すぐに行く。」
そう言って俺は重たい体を起こす。
今日は少し疲れた。
昔の事を考えすぎた。
ふぅ……
俺はひとつため息をついてから部屋を出た。
。