小指ぶつけた

□色々あると一日って速い
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自己紹介を済ませたあと私はお静さんに連れられ、色々な所に顔見せをし(私はあまり人付き合いが得意でないので大いに助かった。)、
顔見せが終わると、お静さんは用事があるから行くよと来た道を戻って行った。

(とりあえず、寝てた家に戻ろうかな。)

お静さんに街を紹介されながら歩き回ったので、これ以上の散策は後日に持ち越し一旦、元いた家に行ってみることにした。


*  *  *  *


家に行くと数人がその家の前で話していた。私は、この中に家の主がいるのではと思い声を掛けようと近寄っていった。

「ん?もしかしてあんたが此処に越してきたもんかい?あたしゃ、向かいのお文だよよろしく頼むね。」

「あぁ、あんたかい。あたしは右隣の初だよ。」

「わたしは、お初の隣の多美だよ。あなたは?」

『は、花子といいます。』

「花子だね。ご近所同士これからよろしく頼むよ。」

(えっ、まじで、つい名乗っちゃったけどこれ私の家じゃないし。訂正しなきゃだよね。)

『あの、わ「じゃあ、誰が越して来たのかもわかったし、私達はもう行くよ」


『あ…。』

私が訂正をする前に奥様方は行ってしまった。

(あー…、行っちゃった。まぁ、勝手に訂正されるよね。奥様方の情報網は半端ないし。)

それよりもこの家の主を探さないといけないだろう。
寝かせて貰ったお礼もまだだし、このまま家を探すのも気が引ける。
そう言えば、利吉さんが家が見つからなかったら暫くは泊めてくれると言ってたしこの家の主が帰ってくるのを待って遅くなっても問題無いだろう。

「それにしても遅いなぁ。」
(もしかして出てこないだけで中に居るんじゃないだろうか。)

そう思った私はノックをした後、恐る恐る戸をスライドし、中に入った。
中は夕日でオレンジ色に染まっていて、黒色の立派な文机があり、その上においてあった紙には…

【この家は貴方のものです。寝室にある屏風の裏には貴方の部屋を模した隠し部屋を造り、快適に過ごせるように致しました。

P.S.ここでの生活で必要な事は貴方の部屋の机の本に載ってるゾ!】

グシャッ

(何これ、最後の“ゾ!”が無性に腹立つんですけど。)

紙を見た私は思わずそれを握り潰してしまった。

未だにイラッとするが部屋が気になったので寝室に向か…

(あれ?これ、自分あてじゃなかったら只の不法侵入じゃ…。だ、大丈夫大丈夫、部屋みて違ってたらスッと何事も無かったかのように帰ればいいんだよ、うん。)

不法侵入という言葉をなんとか頭の中から追い出そうとする間も足は勝手に動き続け、とうとう寝室まで行き着いた。
寝室は畳んだ布団だけが置いてあり、その奥には屏風があった。

(多分これだよね。)

ぺらっ

大きな屏風の裏を捲ると綺麗に四角く穴が空いていて、その中には私が寝起きしていたはずの部屋が広がっていた。

『ふぅー…。』
(よかった〜!違ってたら本当に危ない人だった。)

しかし、色々有りすぎて一番大事な事を流してしまっている気がする。
『そう言えば、何で私は此処に居るんだろう……。』


街を歩き回っていたというのに洋服を着ている人は一人もいなかった。
いくら時代村だったとしても洋服を着ている人ぐらい居るんじゃないだろうか。
それに、お静さんは交番もわからないようだった。

(…まさかタイムスリップ?)
(いや、そんなバカな。いくら常日頃から二次元に行きたいとかバカな事言ってたとしてもそりゃないよ自分、現実を見ろ。)


(………あー、そう言えば、机に本があるって書いてあったよね。確か。それ見よ、それ。)

勉強机の上には紙に書いてあった通り本があった。


【戦国時代マニュアル 〜これで君も立派な戦国人(ΘдΘ)☆〜】

ビタンッ

(何このイラッと感、こんな短期間の間にデジャブを感じるんだけど更にパワーアップしてるし。しかも戦国人って何!?戦国なの此処は、戦国時代なの!?)

『はぁーー…。』

(なんでこんな疲れたなきゃいけないんだろ。)

ため息をつきながらも読み進めていく。

中にはタイトルのおふざけ感からは考えられないようなちゃんとした内容だった。
目次には火の付け方や山菜についてなど、此処が戦国時代なら必要になる知識の項目が載っていて、説明文通りに目次の見たい項目に触れながらページを開けば、それについて事細かに書かれていた。

『あれ?おかしいなぁ。』

此処の常識という項目を見ていると勢力の強い軍という欄に織田と豊臣が一緒に載っていた。
豊臣は本能寺の変が起こり信長が亡くなるまで織田の家臣であったはずなのにだ。

『まさかのBASARA?』

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