【ぶんどり】シリーズ
□チャプター0
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「なんだ、これ?」
受験を間近に控えた日。
いつものように、俺は友人と別れ、夕暮れを背に、帰路についていた。
─ふと、前方、道のど真ん中に、四角いものが落ちていることに気付いたのだ。
鈍く光るそれは、プラスチックのようなもので出来ている。
ただのカード。
いつもなら、周りの誰もがそうするように、何も見なかったことにして通り過ぎていたはずだった。
なのに、なぜか、目が離せなくなってしまったのだ。
交番に届けようだとか。
テレフォンカードなら、使ってしまおうかとか。
その時の俺は、なんにも考えていなかった。
何にも考えず、ただ、無意識のうちに、そのカードに手が伸びていた。
ただの、カード。
─数字も、記名も、発行した会社すら書かれていない、本当に、真っ白なカードだった。
玩具か、それとも、これに書き足して、何かに使うつもりだったのか。
そんな思考をしていても。
どうしてだか。
目が、離せずに。
─捕まったのだ。
きっとそれは、触れてはいけないものだった。
ぱっと、デジタルの“8”の数字がどういった仕様だか、唐突に紅く浮かんだ。
三つ、カードの右下に現れたそれは、それぞれが高速で回りだす。
異様なそれに、更に目を奪われて。
─たとえば、もしここで、これを放り出していたなら。
その、不可解な現象の終わりを、待っていなかったら。
今、考えても、もう、どうしようもないのだけれど。
デジタルの数字が、“100”を指す。
『ようこそ!
幸運なアナタ!!』
今度は、カードの真ん中に現れた、同じく紅い文字。
『これからアナタを!
トクベツな人生ゲームにご招待!!』
すぐに消える文字を、必死に目で追う。
条件反射。
しょうがない、ことだった。
意味もわからず、読んでしまった。
それは、あんまりな招待状だった。
『やり直しましょう!
納得いくまで!!』
あんまりな、“トリセツ”だった。
『やり直しましょう!
満足しても!!』
右下の数字が、どうなってるのか一つ掻き消えて、“99”を指す。
『さあ、一緒に遊びましょう!』
ブラックアウトした視界。
どこか遠くで、心底楽しそうな声が聞こえた。