村民の非日常
□光明 終
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「……ここは」
見覚えのある暗闇。夢にしては鮮明すぎる意識。冷たくて重苦しい空気。
「またか……。また、ここに」
間違いない。ここは数年前に俺を苦しめてきた、悪夢の中だ。
唯一あの時と違うのは、目の前で上映されている映像がぼやけて見えづらくなっていることか。相変わらず体は動かせないようだ。
「これを見ないで済むのはいいけど……。何で今頃……」
あの時夢の中の二人に助け出されて以来、一度も見ることがなかったのに。
ぼやけた映像をぼんやりと見つめながら、最近何かきっかけになることあったっけ、と記憶を探ってみるが、覚えている限りではこの夢に繋がることなんてした覚えはない。第一、以前だっていきなり見るようになったんだし。
……それにしても、何で映像がこんなに不明瞭なんだろう。劣化でもしたのか?この空間も時間の概念が存在するのかな?
それとも実はあの時とは違う夢なのか?
頭の上に疑問符を浮かべていると、突然俺と映像(スクリーンって言った方が正しいのかな)の間に二つの黒い人影が現れた。普通に歩いてきたとか、ワープみたいなことしてきたとかそんなんじゃなくて、最初からそこにいたんじゃないかってくらい自然に。俺は映像から目を離していなかったけど、もしかして本当に最初からずっとそこにいたのかな。
……二人、かぁ。もしかしてあの時の二人だろうか。
徐々に人影の姿がはっきり見えてきた。二人の後ろで今だ流れている映像が少しだけこの空間を明るく照らしている。画面はいつの間にか、セピア色になっていた。
俺は人影は男女のシルエットだったから、てっきり俺の手を引いてくれたあの二人だと思い込んでいた。ひょっとしたら、また会えるのが嬉しかったのかも。
……だけど。