村民の非日常

□ジェンがアホな話
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ジェンはアーチャーである。

長く弓を使い続けているため正確性はもちろん、
身のこなしだってそんじょそこらのアーチャーとは比べ物にならない。

しかし彼女ができるのは遠距離戦だけではない。
体術や剣術も一通り身につけており、短距離戦も難なくこなせる、マルチな武人だ。

だが、そんな彼女はとあることで悩んでいた。

そのせいで彼女は、ご飯も2杯しか食べれず、夜しか眠れないという事態になっていた。
暇さえあれば昼寝したりちょっとした食べ物をつまんだりするのが好きなジェンにとっては由々しき事態であった。



ジェンが所属するギルドで受注したある依頼を片付け、
サタンと二人ギルドに報告するために帰還している途上。

ジェンは馬車内で数秒に一回は溜め息をついていた。
それは間隔が短すぎてもはや過呼吸なのかと見紛うレベルである。

仕事が片付いて早々目の前で陰気なオーラを垂れ流し続ける相棒をじっと冷め切った目で見つつ、サタンもまた黙って馬車に揺られていた。

体力は普段から走り回っているおかげで無駄についているが、決して疲れていないわけではない。
ましてや、今回の依頼はわざわざ普段別行動の多い相棒を連れてくるほどの難関クエストだ。
疲れないわけがない。

そうして疲労の溜まっている体に追い討ちを今まさにかけ続けている目の前の相棒に、見た目や口調こそ温厚そうだが中身は全然温厚ではない、
むしろ短気な、例えば別に好きでもない菓子を食べている際に横からつままれるだけでキレるレベルで短気なサタンは
そろそろ堪忍袋の緒が限界を超えて切れるどころか糸切れになろうとしているところだった。
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