キセキの少女
□第07Q-拒絶と迷い-
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愛歌さんと別れて(一方的に帰られて)から、オレは重たい足取りで部室へと向かっていた。
「よっ。遅かったな、伊月」
「‥はあー‥‥‥」
「挨拶がため息ってどういうことだコラ」
「なになにー?またダメだったのー?」
「うっ」
「‥なにげに言うよなコガって」
「へ?」
ああ、自覚なしですか。天然ってやつか、コノヤロ。確かにダメだったけどさ、その通りだけどさ。大体無理だったんだよ、このオレに勧誘なんて。監督みたいに交渉術とかがあるはずないんだしさ。つーか、なんでオレだけが交渉してんだよ。誘うのはみんな賛成だったじゃないか。‥って
「そうだよ!」
「っ!いきなり真横で叫ぶな!!ダアホ」
「どうしたんですか?」
「‥黒子!!いきなり現れるな!!心臓に悪い‥。」
「すみません、ですが、後から来たのは伊月先輩です。僕は最初からいました」
「あー、悪かった。ってそんなこと言いたいんじゃない!日向!」
伊月はずっと思っていたことを言った。
「っ!な、なんだよ‥!?」
「なんでオレだけが交渉してんだよ!日向、お前部長だろ!?部長が行けよ!なんでオレなんだ!」
「そ、そんなのお前が
一番親しかったからに決まってんだろーが!それに俺にはあの人を説得する力はない」
「このヘタレ」
「んなっ!」
「‥‥」
周りも誰1人と否定はしなかった。
「まあ、いいけど。日向なんて宛にはしてなかったし」
「言ってくれるじゃねーか‥」
「ただ、あれだけ断られるとさ、何かこっちも心がおれてくるって言うか‥」
「あっ!じゃあさ、皆でいけばいいじゃん!?そーすれば、もう一度来てくれるかもしれないしさ」
「コガ、俺はその言葉を待っていたよ!」
「つーか、何でそんなにあの女にこだわるんだよ、ですか?1on1してて、あんまバスケが好きって思わなかったんすけど 」
「でも、先輩は誰よりもバスケが大好きで大切にしてたはずです」
「……まじで?」
「中学の時は、ですが。」
「…ん?って、黒子いつからいたんだよ!?」
「ずっといました」
「嘘つけ!」
「はい、嘘です。今来ました。すみません、遅れてしまって」
「嘘つくなよ!!」
「ですが、僕も気になってました。特に伊月先輩があの人を入れたがる理由が」
「それは」
といいかけて、止まった。そういえば、何でここまでしてこのバスケ部に入れようと
おもったんだろうか。
「バスケ経験者だから、アドバイスとかもらいてーんだろ?」
違う。少なくとも俺はそんなことはあまり考えてなかった。口述には使ったけどね。
『バスケが好きって思わなかったんすけど…』
『先輩は誰よりもバスケが大好きで大切にしてましたよ』
『あたしは皆とは釣り合わない』
「……そうか」
「伊月?」
見たかったんだ…彼女の笑った顔が…。バスケ、その単語を言うたびに辛そうな表情をする彼女を、もし出来るならバスケを通して変えたかったのかもしれない。
『あたしをその気にさせない限りは、ね』
「っ!言葉じゃない、態度で示さなきゃ。俺たちの意思を、本気だってことを。」
もし、大好きだったなら、なおさらバスケでもう一度笑ってほしい。言葉でダメなら、態度で示せばいい。人が増えたからといって心が変わるとは限らない。
「み「ちょっとあんたたち!!まだ着替えてないの!?遅れてくるはずだった伊月君と同じ格好ってどう言うこと!?」
「カ、カントク…だから勝手に」
「いつまで経っても来ないこら、呼びにきたんでしょーーが!!大体キャプテンが一番遅いってどう言うこと!?」
「一応、着替え終わっ
てるっつーの。」
「言い訳は良いから、早く体育館にいらっしゃい?二度と遅れないように体に覚えさせてあげるから」
「カントク」
「伊月君、分かったわ。やっぱりすんなりはいかないわね」
たった一言しか発してないのに、カントクにはすべてお見通しのようだった。
「明日の作戦もあとで考えたほうがいいわね」
「あの、カントクは何でそこまであの人をこの部に入れようと思うんですか」
「へ?彼らと同じってのもあるけど、もうひとつ理由はあるのよね。とりあえず、早く体育館に来い。そしたら話すから」
「わかりました」
カントクは何かあったのかな。少し様子がおかしかったきが……