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□Elysion〜楽園幻想物語組曲〜
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〜Prologue〜
…刹那に散り逝く花弁が
緋色の瞳に映るよに
君に捧げよう5つの光を…
[side:A]もうすぐ…もうすぐだよエリス…やっと…君を見つけることが出来たのだ…。
白銀で眩しい程の雪化粧をした大地に緋色の雫で歪な線を描きながら、男は暗闇に目を凝らし、遠のきそうになる意識を必死で繋ぎ止めんと足を進めていた。「時間がない…」自分の命の灯火があとどれほどなのかは、想像に難くなかった。こんなにも待ち望んだはずの再会。
「エリス…」
男はもう一度、探し続けた愛娘の名を呟いた。
彼女に再会できたらまず、何を話そうか…真っ先に思いついたのはもちろん、『償いの言葉』。自分に彼女と会う資格がないのではないか…と何度考えたことか。
愛するが故の選択だったとはいえ、約8年前この世に生を受うけて間もない娘を、自分は捨てたのだ。
彼女は…こんなにも罪深く、愚かな父親を赦してくれるだろうか…?いや、赦されぬだろう。そんなことはわかっているのだ。自分の犯した罪の重さも。…何度後悔したことだろう。
しかし、あの時はああするしか…それが彼女にとって1番幸せな選択のはずだったのだ…。赦してもらえずとも、今、自分が出来ること彼女のために…捧げたい。たとえ無力であっても、伝えたいことがある…。もうすぐ消えてしまうであろうこの命をかけて…。
『愛しているよ…エリス。』