N
□〜第1章〜 Ark
2ページ/24ページ
兄は、妹を愛していた。
妹も、兄を愛していた。
しかしその愛は、"家族愛"などでは決してなかったのだ。二人は、1人の男、1人の女として惹かれ合い、"血縁"という抗えぬ運命の中で恋人同然に毎日を過ごしていた。
二人は幸せだった。
この世に生きる限りいつまでも一緒にいられるという事を信じて疑わなかった。
妹:ソロルは街の中等学校に、兄:フラーテルは高等学校に通っていた。毎朝、分かれ道まで一緒に行き、帰りは兄が妹を迎えに行く、というのが二人の日課だった。
その様子は兄妹であるということを除けば、恋人同士そのものだった。
そして夜は二人で身を寄せ合うようにして眠りに就く。
毎晩二人は手を繋いで眠った。妹は、自分の手をいつも温かく包み込んでくれる兄の大きな手が大好きだった。
いつの日か、自分と兄の左手の薬指にお揃いの誓いの指輪{リング}
が嵌められることを夢見ていた…。