□〜第3章〜 Yield
2ページ/30ページ


「どうだい?今年は?」

「きっと今年は、豊作よ。
土が、樹が、水が、こんなにいきいきしているもの。」

そう。夏が過ぎたらきっと、
真っ赤な果実が実るから。

「そうか。エレンと一緒に、楽しみにしているよ。」

キースが微笑む。
リコは小さな頃から、彼の、この優しい微笑みが大好きだった。

「ええ。実ったらきっと、届けに行くわ。」
リコも、微笑み返す。


キースとリコは、幼馴染として育った。
幼少時代は、一緒に居るのが当たり前だった。

優しい瞳、微笑み、声…
誰よりも自分を理解してくれる、存在。

リコはそんな彼を、愛していた。
ずっとずっと、彼だけを見つめてきた。


しかし現在、彼は…リコの隣にはいなかった。
彼の隣にはずっと、エレンという恋人がいた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ