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□〜第3章〜 Yield
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「どうだい?今年は?」
「きっと今年は、豊作よ。
土が、樹が、水が、こんなにいきいきしているもの。」
そう。夏が過ぎたらきっと、
真っ赤な果実が実るから。
「そうか。エレンと一緒に、楽しみにしているよ。」
キースが微笑む。
リコは小さな頃から、彼の、この優しい微笑みが大好きだった。
「ええ。実ったらきっと、届けに行くわ。」
リコも、微笑み返す。
キースとリコは、幼馴染として育った。
幼少時代は、一緒に居るのが当たり前だった。
優しい瞳、微笑み、声…
誰よりも自分を理解してくれる、存在。
リコはそんな彼を、愛していた。
ずっとずっと、彼だけを見つめてきた。
しかし現在、彼は…リコの隣にはいなかった。
彼の隣にはずっと、エレンという恋人がいた。