サイボーグ

□第4話
3ページ/5ページ

「あ〜、ひど〜い!
私これでも18だよ〜!」
「マジで…」
数秒間おれは沈黙した。
「あっ、昔住んでた施設の名前とか住所ならわかるんじゃない?」
バカにされて悔しかったのか、景斗は何もなかったかの様に突然話を戻してきた。

「5歳の時に抜け出したから、正確な場所はわかんねーな〜。
ここからだいぶ北の方だとは思うけど…。
確か名前はグリーンハウスだったと思うぞ。」
「グリーンハウスね。
それだけでもわかれば、なんとかなるかも。」
景斗はそういうと、メモをとりながら、部屋から出ていった。

「…」
あの夢は夢じゃなかったかもしんねーな。


その日の夜…
「あれ?
まだ帰ってない…」
部屋に戻ってきた景斗がつぶやいた。
景斗と鈴はタワー内に設けられている、部屋に2人で暮らしている。
このαタワーは、50階建ての円柱状の建物でB3〜9階が研究室、10〜20階がトレーニングルーム、21〜30階がサイホーグの部屋、31〜45階が役員の部屋、46〜50階が会議室やゲストルーム、社長室などその他施設が設けられている。
ちなみにヴィンセントの部屋が30階、景斗達の部屋が31階にある。
「ちょっと探しに行こっかな〜。」
景斗はそう言って、タワー中央のエレベーターで、B1階に向かった。
エレベーターを出ると、すぐ目の前に20型程度のモニターがある。
このタワーの、中央管理板的役割を担っているスーパーコンピューター゛アルファー゛だ。
「今晩はアルファー。」
景斗が何も映っていないモニターに話しかけると、モニターに愛らしい目と口が表れた。
「今晩は景斗さん。」
そしてそのモニターの口に合わせてアルファーが答えた。
「お母さんがどこにいるか教えて。」
「工藤鈴博士ですね…3階Aー15号室にいます。」
「3階Aー15は…遺伝子操作室かぁ。
何やってんだろ?」
景斗はそうつぶやき、首を傾げた。
「景斗さん、表情に疲労が見受けられます。
栄養不足、及び睡眠不足が原因かと思われます。
夜更かしはほどほどにお休みください。」
「ははっ。
ありがと。
それじゃおやすみなさい。」
景斗は苦笑いをして答えた。
人が人を気遣う余裕がないほどに、このタワーの人間は忙しかった。
そんな中、コンピューターであるアルファーに気を遣ってもらい、景斗は複雑な気持ちだった。
人間らしさを失い、機械的に働く人間。
人間らしさをプログラムされ、人間らしく振る舞う機械。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ