サイボーグ

□第4話
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そんな環境で育ってきたからこそ、景斗は人間らしく、明るく、天真爛漫に振る舞っているのかもしれない。
そして景斗はB1階を後にした。

3階Aー15号室。
鈴は何度も同じ作業を繰り返していた。
鈴の目の前のモニターには、“99.998%”と表示されている。
「何度やっても同じ…」
鈴はそうつぶやくと、下を向き大粒の涙を流した…。
“99.998%”とは、Aの遺伝子とBの遺伝子が親子である可能性を表したパーセンテージである。
Aの遺伝子が鈴の遺伝子。
そしてBの遺伝子が…
「お母さん見〜つけた。」
景斗が突然部屋に入ってきた。
「なにやってんの?」
そう言って鈴に近づいた景斗は、鈴の涙を見て驚いた。
「どうしたのお母さんっ!?」
景斗は状況がわからず、キョロキョロとあたりをみた。
気になったのは、モニターに映った、“99.998%”の数字だけだった。
「お母さん、何を調べてたの?」
景斗の質問が聞こえていないのか、鈴は何の反応もしなかった。
「アルファーミニ、お母さんが何を調べてたか教えて!」
景斗はモニターに向かって話しかけた。
アルファーミニとは、アルファー以外のタワー内に点在するAI(人工知能プログラム)の事をそう呼んでいる。
「鈴博士の許可なく、教える事はできません。」
「許可します。
いずれ話さなくてはいけない事だから。」
アルファーミニの応えに、鈴が力なくこたえた。
「かしこまりました。
鈴博士は、鈴博士とサイボーグヴィンセントが親子である可能性を調べていました。
結果、2人がほぼ親子である事が、確認されました。」
Bの遺伝子はヴィンセントのものだった。
「えっ…」
景斗は言葉を失った。
意味が分からなかった。
冗談かとも思った。
「…ど、どういう事…?」
やっと言葉がでた。
「ヴィンセントはあなたの双子の兄よ。」
それは唐突に告げられた。
「えっ!?
…兄弟がいるなんて聞いてないよ…
どういう事っ?
お母さんは始めから知ってたの?」
景斗は動揺を隠しきれないでいた。
冷静になろうとしても、いろんな疑問があふれだし、頭の中は混乱していた。
「私も確信したのは、この結果がでた時よ。
言動や信念が主人に似ていたから、始めはなんだかすごく懐かしさを覚える程度だったの。
でも景斗から、グリーンハウスの名前を聞いて、もしかしたらと思って調べてみたの…」
鈴は泣きながらではあったが、はっきりとした口調で話した。
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