サイボーグ

□プロローグ
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2135年1月17日
12年前…私アネットが、まだ5歳だった頃…。
 
「ねぇ、ママは元気になるの?」
私は隣にいる、叔父のフィブリスに訪ねた。
「兄さんなら、きっとやってくれるよ。
パパを信じよう。」
「うんっ。」
私は満面の笑みで答えた。

母エディーの身体が動かなくなってから、2年が経っていた。
首から下は、全く動かなかった母だったけれど、いつも笑顔で、私や父パドルに元気をくれた。
「もう一度、元気に動けるように、してやるからな!」
と、父はいつも口癖のように言っていた。
国を代表するほどの科学力をもった父は、2年という歳月を経て、母の身体を造った…。

「ママはサイボーグになるの?」
私は唐突に叔父に訪ねた。
父と母が研究室に入ってから1時間ほど経過していた。
私は研究室の前に長椅子を用意して、叔父と一緒に、待っていた。
父は、
『母さんの脳を機械の体に移すだけだよ。』
と言っていた。
口で言ってしまえば簡単な、そんな作業が、今まさに行われていた。
「サイボーグ?
兄さんがそう言ったのかい?」
叔父は少し驚いた顔をした。
「うん。」
「そうだね…まさにサイボーグだ。
映画や漫画の世界でしか存在しなかったものを、実際に造ってしまうんだから…
大したものだよ兄さんは…」
そう言って、遠い目をした叔父の顔は、なぜかとても冷ややかだった。

それから何時間が経っただろう…
私は待ちきれずに、ウトウトし始めていた。
私の横にいた叔父が、席を立ち、私にタバコを吸うジェスチャーを見せ、外に出て行った。
叔父が外に出たと同時に、私は座っていた長椅子にコテンと寝転がり、そのまま眠ってしまった…。
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