サイボーグ

□第1話
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2147年7月23日午前
タッタッタッ…
今では使われていない、中学校の旧校舎の階段をおれは必死に上がった。
「やっと見つけた!
このチャンスを逃すわけにはいかねー!」
一番上までたどり着き、屋上の扉を思いっきり開けた!
「うわっ!」
電気のない薄暗い旧校舎から、晴天の外へと飛び出したおれは、目がくらんだ。
徐々に視力が戻り、辺りを見渡した。
「見つけたっ!」
そこには白衣を着た30半ばぐらいの女性と、制服を着た女子高生がいた。
おれの目的は、白衣の女性の方にあった。
旧校舎の前を歩いていて、ふと屋上を見上げた時、偶然その女性を見つけたのだ。
別に知り合いという訳ではない。
「お〜い、そこのあんた〜!」
おれはその女性のもとへと走って行った。
「ちょっとあなた!
この状況わかってるの!?」
唐突に白衣の女性が、小声でしかし力強く、おれに話かけてきた。
「状況…?」
おれは訳も分からず、キョロキョロと辺りを見渡した。
しかし特に変わった様子もなく、ただ女子高生が10メートルほど離れた場所に立っているだけだった。
屋上を囲っている柵の外側に…
柵の外側に…!?
「あ〜!
もしかして飛び降り自殺かっ!?」
閃いたおれは思わず声をあげた。
「ちょっと声が大きいわよっ!」
さっきから初対面の人間に怒られてばかりだ…。
「あの子知り合いなのか?
自殺なんて不自由な奴だなぁ…」
おれは小声で、訪ねた。
「いいえ。
さっき偶然ここで出会ったの。
説得してるんだけど、全く反応がないのよ…」
白衣の女性も小声で答えた。
「ところであんた、Ω社の人間だろ?」
おれは唐突に話を変え、訪ねた。
女子高生の方は、“今にも飛び降りそう”な雰囲気はなかったので、助けたい気持ちはあったが、後回しにした。
それだけおれも必死だったからだ。
「だったら、なんなのよ。
今はそんな話してる場合じゃないでしょ!」
また、怒られた…
「頼みがあるんだ…おれをサイボーグにしてくれ!」
おれは手を合わせ、頭を下げて頼んだ。
すると白衣の女性は少し冷ややかな顔をして答えた。
「悪い事は言わないわ、サイボーグになんて好き好んでなるもんじゃないわ。」
「どうしてもサイボーグじゃなきゃダメなんだ!
頼むから…」
と、そこまで言いかけた時
「すいません…」
と、女子高生がこちらに話しかけてきた。
「な、なに?」
「父と母にごめんなさいって伝えてください。」
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