サイボーグ

□第4話
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練習を続けて数十分、ペンを持ったおれの右手は、自分でも信じられない早さで上下運動を繰り返していた。
ペン先は数ミリのズレもなく、正確に同じ場所に点を打っていた。
「おい景斗っ!
おれって結構すごくねーか?」
っと景斗の方を向くと、景斗はベッドに寄りかかりウトウトと居眠りをしていた。
「ん〜?な〜に?」
景斗が寝ぼけまなこで、起きあがった瞬間…
プシャーっと音をたて、ドアが開いた。
「あら〜ずいぶん修得が早いわね〜。」
そう言って入って来たのは鈴だった。
「すごいだろぉ?
自分でもビックリしてたところだ。」
おれは少し自慢気に鈴に言った。
「景斗、彼の今のシンクロ率はどのくらいなの?」
「最新のはまだ計ってないの…。」
景斗は少しおとなしげに答えた。
「居眠りする暇があったら、やる事はちゃんとやりなさい!」
鈴は言葉は優しく、しかし力強く景斗に言った。
「ごめんなさい…」
景斗は慌ててよだれを拭い、あやまった。
「測定器とってくる。」
そう言って外に出て行き1分もたたないうちに戻ってきた。
握力計の様な物を持って来た景斗は、はぁはぁと息切れをしながら、それをおれに手渡した。
「それを握力計と同じ要領で、握ってみて。」
息切れしている景斗に代わって、鈴が言った。
おれは言われるがまま、測定器を右手で握り、力を込めた。
「ふんぬーっ!」
妙なかけ声とともに測定器を握ると、デジタル表示の数値がみるみるうちに上がっていった。
もう一踏ん張り力を込めようとした瞬間…
『やばい壊してしまう!』
と、そんなことが頭をよぎったので、おれは力を抜いた。
数値を見ると91%と表示されていた。
「信じられない…」
鈴がつぶやいた。
「すごいよお兄ちゃん!
90%以上なんて普通半年以上はかかっちゃうんだよ!」
景斗はさっき怒られた事など、さっぱり忘れ、いつもの様にはしゃぎだした。
「そんなにすごいのか?
今手加減したから、もっといけると思うぞ。」
「手加減って…もう一度本気でやってみて。」
真剣な顔で鈴が言った。
「何度もやるのはかまわねーけど、握りつぶしちまっても知らねーぞ。」
おれはいちを忠告をした。
「その心配はないわよ。
それは100%のサイホーグでも壊せないように出来てるから。」
そうは言っても、おれには妙に壊せる自信があった。
「まぁそう言うなら遠慮なく…」
そしておれはまた力を込めて握った。
数値は93%と表示していた。
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