サイボーグ

□第6話
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今日は検査という事で、おれは景斗に言われるがまま、だだっ広い部屋に連れられた。
直径50メールほどの円柱状の部屋で、何も物は置いてなく、その部屋の中央に、おれがぽつんと立っているだけだ。
壁のガラス越しに、景斗や鈴、そして数人のスタッフがおれの方を見ている。
ガラス越しの部屋にはいろいろな機械設備があるようで、それらの設備でおれを検査出来るのだろう。
「ヴィンセントさん聞こえますか?」
おれのいる部屋に景斗の声が響いた。
ガラス越しに景斗がマイクに向かって話しているのが見えた。
他のスタッフがいる手前、いつも通り“お兄ちゃん”とは言えないようだ。
「おぉ〜ちゃんと聞こえるぞ〜。」
おれは景斗に向かって軽く右手をあげて応えた。
「それでは検査を始めます。」
景斗がそう言うと、おれのいる場所から20メートル先の方に、突然人が現れた。
「それは立体映像です。
今からその人型の立体映像が、ランダムに発砲してきます。
弾をよけてください。」
景斗はさらりととんでもない事を、義務的に言った。
「りょーかい。」
しかしおれはその難題に軽く返事をした。
よけれる自信があったからだ。
何年か前に一度だけ実弾をよけた事があった。
弾の軌道とタイミングさえわかれば、単発の銃ならよける事が出来る。
弾の軌道は銃口の向きで…撃ってくるタイミングは指の動きでわかる。
しかし以前は、よけたとはいえ、左腕をかすめ負傷してしまった。
おれ自信に足りない物があったからだ…
…っと、そうこうしている内に立体映像が銃を構えた。
おれは集中力を高め、動きやすい体制に身構えた。
そして音もなく弾は放たれた。
1発…2発…3発…4発…撃つタイミングはバラバラだが、有無もいわさず連発してきた。
しかしおれは全ての弾をかすりもせず、難なくかわした。
以前のおれにたりなかったもの…それはスピードだった。
いくら弾の軌道や撃ってくるタイミングがわかっていても、それをよけきれるだけのスピードがなければ、致命傷は避けれても、よけきる事は困難だった。
しかし今のおれにはそれをよけるだけのスピードがある。
 
「あの子…全て交わしてるわね…。
普通は最初の5、6発までは当たるものなのに…」
鈴はガラスの向こうで難なく、弾を交わすヴィンセントに驚いていた。
「お兄ちゃんの意外性は今に始まった事じゃないじゃない。」
景斗がニコニコしながら鈴に言った。
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