サイボーグ

□第8話
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工藤親子の部屋…
ベッドが二つ並んでいる。
一つのベッドには景斗がうつ伏せになって横たわっている。
もう一つのベッドには鈴が腰掛け、景斗の方を眺めている。
景斗の顔は鈴とは逆方向に向けられている。

ヴィンセントと別れ、部屋に戻って来た二人は、この状態のまま何時間かの時を刻んだ。
「お兄ちゃんなんでわかったのかなぁ…私が無理してるって…。」
不意に景斗が口を開いた。
鈴は返事をしようにも、突然だったので言葉が詰まった。
それを知ってか知らずか、景斗は鈴の返事を待たずに、言葉を続けた。
「やっぱり双子だからわかったのかなぁ?」
………。
「そんなんじゃないわよ。」
しばしの沈黙を破り、鈴が答えた。
その答えに反応するかの様に、景斗はクルッと鈴の方へ顔を向けた。
「あの子はわかるかのよ…
人の心の痛みが…。
あの子は今までにたくさんの苦労をし、厳しい環境で生きてきたと思うの…。
だから人のつらさや痛みが自分の事の様に感じられるのよ…。」
ヴィンセントに対し、そういう環境を歩ませてしまったという罪悪感を、鈴が感じていると、景斗は前々から感じ取っていた。
「そんなのわかんないじゃん。
お兄ちゃんは自由に生きてきたって言ってたから、案外そんなに苦労とかしてないかもよ。」
鈴の罪悪感を少しでも和らげてやるには、そんな言葉しかうかばなかった。
「あの子の言動、たまにおかしいと思わない?」
鈴は不意にそんな事を言った。
「う〜ん…歳の割には少し大人びてるかなぁって感じるくらいかなぁ。」
「そうね…大人びている時もあれば、子どもの様に無邪気に話す時もあるわ。
自分をいくつかの人格に使い分けていかなくちゃいけない環境で生きてきたと考えれば、あの言動もうなずけるわ。」
今まで横になっていた景斗が身体を起こし、鈴と面と向かって座った。
「それは考え過ぎだよ。
お兄ちゃんは自分に正直なだけだよ。
だから感情に合わせて、言動も変わっちゃうんだよ。」
「そうだといいんだけどね…。
でもね、あの子がいろんな環境を生き抜いてきた事は間違いないと思うの。」
「そりゃ私達とは、全く違う環境だったかもしれないけど、どうしてそう言いきれるの?」
「シンクロ率よ…。」
「…!?」
景斗は今までの会話の中で、どうしてシンクロ率が関係してくるのかわからずキョトンとした。
「あの子のシンクロ率の向上はズバ抜けているわよねぇ?」
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