サイボーグ

□Afterstory
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お兄ちゃんがタワーを出てから、翌日。

レックス君に呼ばれ、私は支店長室の前に来た。
プシャーというエアーの抜ける間抜けな音とともに、大きなドアが開いた。
「すいません、わざわざ呼び出したりして。」
中から正装姿のレックス君が出てきた。
……本当に支店長だったんだ…。
「お2人にお願いしたい事があります。」
お2人?
私以外に人がいるのかと思い、私は周りを見渡した。
「うわぁっ!」
っと、私はあからさまに驚いた。
すぐ真後ろに、人影があったからだ。
「君…人の顔を見て驚くなんて、失礼だね。
今は驚くような顔ではないと思うけど。」
その人影は冷静に話しかけてきた。
あっ!?
この口調は…
「イランさん?」
「すまないね…いつも顔が違うから紛らわしいだろ?」
「いやいや、突然後ろにいて驚いただけだから。」
全く気配を感じないから、こうしてそばで話しているのに、まるで存在感を感じない。
流石スパイタイプ。
「どうぞ。」
と、レックスに紳士的に促され、私達は部屋へ入った。
支店長室というわりには、豪勢な感じはなく、私達一般社員と、なんら変わらない間取りだった。
私とイランさんは隣り合って座り、テーブルを挟んで、向かいにレックス君が座った。
「あなた方に、お願いがあります……」
彼はそう言って、話し始めた。
まずは、今のαタワーの現状…。
そして、生気に乏しく、機械的に働くようになってしまった社員の状態…。
「これらの事を打開する為に、あなた方に協力をしてもらいたいんです!」
「僕は別に構わないよ。」
イランさんは即答した。
でも私は答えに詰まった。
タワーや社員の状態が良くない事は、私も身にしみてわかっているし、それを何とかしたいとも思っている。
しかし何故彼が私を選んだのか…?
彼に着いていっていいものなのか…?
色んな疑問や葛藤はあるけど…ただ単純に、私がレックス君の事を信用しきれてないんだと思う。
「それともう一つ……」
レックス君は、私の返事を待たずに、話を続けた。
それはαタワーを病院に戻す事……
そして、サイボーグの技術を兵器としてではなく、医学として世界に広める事……
それらの事を、今まで見た事のないくらいの勢いで、彼は熱く語った。
「僕一人では、夢が夢に終わってしまいそうです。
どうか2人の力を貸してください!」
彼は深々と頭を下げた。
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