サイボーグ

□第1話
1ページ/1ページ

2147年1月2日
雪の積もった山道をゆっくりと進む人影が2つ。
舗装はされていないが、かろうじて道と呼べる道を、足元に注意を払いながら歩いている。
1人は、身長170cmほどの男性。
目が細く、髪の毛は綺麗なストレートで、耳元まで伸びている。
昨日、19歳になったばかりだ。
名前をアーク・アースという。
そしてもう1人は、身長130cmほどの女の子。
目が細く…というより目を閉じており、こちらも綺麗な髪質で、ツインテールをしている。
目を閉じているのは、開いている意味がないから……つまり盲目なのだ。
今日、10歳の誕生日をむかえた。
名前をエリー・アースという。
この2人は兄妹である。
新年の挨拶を兼ねて、山奥の村に住む、祖母の元へと向かっていた。
「エリー…疲れてないか?」
アークがエリーの手を引きながら訪ねた。
「うん……まだまだ大丈夫だよ。」
道は緩やかに登り坂になっている。
2人の口元からは、真っ白な息が、顔を包むようにはき出されている。
「もう少しだ…頑張ろう。」
アークはエリーを励ました。
「お兄ちゃん…何か聞こえない?」

バキバキバキッ!
パンッパンッパンッ!
ガサガサガサ!

突然遠くで妙な音が聞こえた。
「何の音だ?」

ガサガサガサ!
バキバキバキ!

人が走っている音と、枝が折れる音だと、アークは認識した。
次第にその音が近づいてくる。

バキバキバキバキ…ズザーー!!!!

突然アークの目の前に、木々の間から人影が飛び出して来て、足元へ滑り込んできた。
アークはとっさに、エリーを守る様に抱きしめた。
「何っ!?
何が起こったの?」
エリーが不安そうに訪ねた。

人影は立ち上がると、自分が飛んできた方向を見た。
身長はアークよりも少し低く、服装はボロボロで、何カ所か傷を負っているようだ。
髪は長いが男だということはわかった。
「あんた…大丈夫かい?」
アークは傷が心配になり、ボロボロの男に訪ねた。
しかし返答はなかった。
「あそこにいるぞーーっ!」
ボロボロの男が飛んできた方向から声がした。

バキっ!

その声を聞くと同時に、アークは腹に激痛を感じ、吹っ飛んだ。
ボロボロの男に殴られたのだ。
「一般人がいるぞ!」
気がつくと、アークの周りに3人の人影があった。
皆、髪と瞳が藤色だ。
それを確認しただけで、この3人がサイボーグだということがわかった。
「キャッ!」
突然エリーが叫んだ!
「エリーっ!」
アークが叫びながら起き上がった。
エリーはボロボロの男に羽交い締めにされていた。
ボロボロの男が、サイボーグ達に向けて銃を突きつけてきた。
サイボーグ達はアークを守る様に、アークの正面に立った。
「一般人を巻き込むなっ!」
一人のサイボーグがボロボロの男に向かって叫んだ。
と同時に、3発の銃声が辺りに響いた。
弾は3人のサイボーグに直撃し、直撃したと同時に弾が小さな爆発を起こし、3人は吹っ飛んだ。
アークの真正面にいたサイボーグは、頭を直撃し、アークの方へと吹っ飛んできた。
アークは衝撃に耐えられず、サイボーグを抱えたまま、尻餅をついた。
「お兄ちゃんっ!?
大丈夫っ!?」
エリーがただ事ではないと感じ、アークに向かって叫んだ。
「僕は大丈夫だっ!
エリー、あまり騒がないで大人しくしてるんだ。」
アークは命の危機を感じずにはいられなかった。
「オートモード始動!
目標を生きたまま確保!」
アークに倒れ込んでいたサイボーグが、機械的な声で話し出し起きあがった。
ボロボロの男は慌てて、銃を撃った。
が、弾はサイボーグに弾かれた。
さっきの弾とは種類が違うのか、今回は爆発しなかった。
サイボーグは何事もなかったかの様に、人差し指を相手の方へと向けた。
そして……

バンッ!

人差し指から弾が放たれた。
弾はボロボロの男の足元へと一直線に向かっていった。
弾は盾にされていたエリーの腹を貫通し、ボロボロの男の足を貫いた。
エリーとボロボロの男は倒れ込んだ。
アークは目を疑った。
「何やってんだ貴様ーーっ!!!!」
アークは叫ぶと同時に、サイボーグを殴り飛ばした。
そしてエリーの元へと走った。
ボロボロの男が、膝を付いてアークに銃口を向けた。
すかさず銃口の前に、倒れ込んでいたはずのエリーが立ちふさがった。
しかし容赦なく銃は放たれ、エリーの小さな体は、崩れる様に倒れ込んだ。
「エリーーーーっ!!!!!!
うわあああああああああっ!!!!!」
アークは大量の涙を流しながら叫んだ。
そしてアークにも銃は放たれた。
腹部に何発か弾が貫通したが、アークは我を忘れ、ボロボロの男の元へと向かい、殴りつけた。
何度も何度も殴りつけた。
「君、もうやめるんだっ!」
アークは先ほど吹き飛んだ2人のサイボーグに抑えられた。
「離せっ!」
アークは2人のサイボーグを振り払い、先ほど殴り飛ばしたサイボーグの元へと走った。
腹部からは大量の血が吹き出している。
サイボーグはアークに殴り飛ばされたままの格好で倒れていた。
アークはそのサイボーグも、ボロボロの男同様に、何度も何度も殴りつけた。
サイボーグの顔は真っ赤に染まっていく。
サイボーグの血ではない……血はアークの拳から吹き出ていた。
アークはそのまま意識を失い、サイボーグに覆い被さる様に倒れ込んだ。

意識を失う瞬間、アークは一瞬だけ意識を取り戻していた………

「夢なら覚めてくれ…………。」
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ