サイボーグ

□第5話
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2147年1月4日
2人が目覚めた翌日。
「初めまして。
エリーの兄のアーク・アースです。」
「エフィル・ドラッグよ。
よろしくね。」
アークとエフィルは簡単に挨拶を交わし終えると、エリーと共に芳志の部屋へと向かった。
今日は芳志の部屋で説明会をする予定になっている。
「エフィルさん、日記帳ありがとうございます。
エリーがすごく喜んでましたよ。」
アークは妹へのプレゼントのお礼を言った。
「そっか、喜んでくれたなら私も嬉しいよ。
………アーク、その敬語で話すのやめてくれないかい?
堅苦しいのは嫌いなんだ。」
エフィルは本当に嫌そうに言った。
「……わかった。
エフィルさんにはもう敬語は使わないよ。」
「ははは、切り替えが早いなぁ。
あんた気に入ったよ。
何度言っても敬語をやめないバカとは大違いだ。」
エフィルはわっはっはっと女性らしからぬ仕草で笑った。
敬語をやめないバカ……アークとエリーの頭には芳志の顔が浮かび、2人で顔を見合わせて笑った。
雑談をしながら歩いていると、工藤芳志と書かれた表札のある部屋をアークは見つけた。
「この部屋だよ。」
エフィルが教えてくれたので、アークはノックをしようとしたが、拳がドアに当たる前に、勝手にドアが開いた。
「自動ドア?」
基本的にはドアの横のセンサーに手を触れる事で、ドアが開く様になっているが、勝手に開いたので、アークは少し驚いた。
「いやいや自動ドアじゃないよ。
ドアの仕組みはどの部屋も一緒さ。」
エフィルが説明を終えると、ドカドカと部屋へ入って行った。
「コラ工藤ーっ!
ドア壊れてるじゃないかっ!」
そして渇がとんだ。
「やぁ皆さんお待ちしてましたよ。
エフィルさんどうしたんです?」
芳志はいたってマイペースだ。
「ドアが勝手に開いたぞ!
自分の部屋の故障も気付かないなんて、それでも科学者か!」
補足しておくが、立場的にも、科学者の能力的にも、芳志の方がエフィルよりも上である。
「おかしいですねぇ〜。
昨晩は正常でしたよ。」
芳志は首を傾げた。
「だったら今日壊れたんだろ?
しっかり直しとけよ!」
「はい。」
子どもが母親から怒られている様で、アークとエリーは思わず笑ってしまった。
「あなたといると、いつも僕は笑いものだ。」
と、芳志は肩をおとしたが、それほど嫌そうではなかった。
「あんたがしっかりしないからだろ!?」
またエフィルの渇がとんだ。
「まぁまぁ、早く説明会を始めましょうよ。」
2人のやりとりは、見ていて面白かったが、アークは仲裁に入った。
「そうですね。
ではお2人はそちらの席に座ってください。」
アークとエリーは促された椅子へと座った。
椅子の前には特に何も置かれていない。
「ではこのテキストを見ながら説明していくので、耳の裏に入れてください。」
アークとエリーは、メモリーチップを芳志から受け取った。
そして説明会が始まった。

テキストの手順に従い、芳志が説明を加えていった。
基本的な事柄から説明していき、話はガンマデルタ支店の概要へとうつった。
「ガンマデルタ支店がどういう建物か見たことがありますか?」
芳志は2人に質問した。
「外観は中が見えないぐらいの高い塀で覆われているから見たことはないよ。
ただわかることは、直径1kmぐらいの広い円形の土地を有しているって事ぐらいかな?」
アークが答えた。
「私も高い塀しか見た事ない。」
エリーも続けて答えた。
「そうですね。
確かに直径約1kmの外周を高い塀で囲っています。
しかしそれはガンマ工場のみの外観です。」
「ガンマ工場?
やはりガンマとデルタで別れてるんだね?
ガンマデルタって2つの単語が繋がってるから、おかしなとは思ってたんだ。」
アークが少しすっきりしたと言わんばかりに話した。
「はい、その通りです。
ガンマ工場の真下に、ほぼ同じ広さでデルタ地下工場があります。」
芳志の説明と共に、アークとエリーのテキストには、大まかなガンマ工場とデルタ地下工場の外観が映し出されていた。
「僕達がいるのはデルタ地下工場ですね?」
アークが訪ねた。
「その通りです。
よくわかりましたね?」
芳志は少し驚き、アークに訪ね返した。
「単純に勘ですよ。
ここの施設で窓を見た事がない事と、芳志さんが地下の乗り物であるグランドラゴンの総責任者である事から、そう思いました。」
「確かに私はグランドラゴンの総責任者である事から、デルタ地下工場に属していますが…。
いやぁ対したものですね〜、そこまで頭が回るとは。」
芳志は感心して頷いた。
「いえいえ。
ところでガンマとデルタの違いって何ですか?」
アークは謙遜し、すぐに話を戻した。
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