サイボーグ

□第8話
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「うっ…ん。」
アークが小さく声をあげた。
「あっ!?
お兄ちゃんが目覚めたみたい!」
エリーの喜びの声と共に、その場にいた芳志とエフィルとヴァンが一斉にアークの方を見た。
「すみません……随分寝てしまったようだ。」
アークが時計を見ながら言った。
時は5時間ほど経っていた。
「いえいえ、大丈夫ですよ。
それより体調はどうですか?」
「休ませてもらったので大丈夫です。
低いシンクロ率で無理したのがまずかったみたいですね。」
アークはポリポリと頭をかきながら、苦笑いをうかべた。
「アンドロイドはどうなりました?」
「お陰様で沈黙しました。
今、解体して調べているところです。」
「そうですか…みんな無事で良かった。」
「…でっ!?
早速で悪いんだけど、あんたらEタイプなのか?」
ヴァンが突然話を割って本題に入ってきた。
「少しは空気読めよ!
アークは目覚めたばかりなんだぞ!」
流石にエフィルがツッ込んだ。
「おれはいきなり巻き込まれて、何時間も待たされてんだよ!
聞く権利ぐらいあるだろ!」
ヴァンは思いのほか待つことに苛立ちを感じていたようだった。
「そんなだからあんたはいつまで経っても、自分の事しか考えないお子様なんだよ!」
「なんだとぉ!」
「まぁまぁちょっと待って下さいよ!」
ヴァンとエフィルの言い合いに、アークが止めに入った。
「僕達の事で揉めてるのかな?
そちらの方はさっき助けてくれた人ですよね?
ありがとうございました。
僕はアーク・アース。
あなたは?」
アークは至って冷静に、ヴァンに質問した。
「おれはヴァン・ドラッグだ。
悪かったな、取り乱しちまって。」
ヴァンも冷静を取り戻した。
「いいえ、よろしくお願いします。
ところでEタイプって何ですか?」
「Eタイプと言うのは、稀に非常識な能力を持ったサイボーグが誕生するんですが、そのサイボーグの事をEタイプって呼んでるんですよ。」
アークの質問に対して、芳志が答えた。
「そうなんですね……。
Eタイプの定義は解りませんが、僕とエリーはそうなのかもしれません。」
アーク自身も確信はなかったが、エディーに力をもらったサイボーグが、Eタイプと呼ばれてるのだと、自己解釈した。
「間違いねーよ。
ある人物から、望みを叶えるかわりに言うことを聞けって言われたんだろ?」
「その通りです!
ヴァンさん詳しいですねぇ。」
アークは少し驚いて答えた。
「……。
アーク、その敬語とさん付け止めてくんねぇか?
大して歳も変わんねーんだし。」
ヴァンが嫌そうに行った。
「わかったよヴァン。
もしかしてキミもEタイプなのかな?」
エディーの事をあえて“ある人”と表現した事と、エディーとのやり取りの内容を知っている事から、アークはヴァンもEタイプなのだと思った。
「いや、おれはEタイプじゃねーよ。」
「そうだよ。
こいつがEタイプなはずはないよ。
今でこそ支店最強なんて言われてるけど、初めはへなちょこで、ここまでくるのに何年かかったことか。
こいつは優れた能力なんて、これっぽっちも持ち合わせちゃいないよ。」
エフィルが皮肉めいて言った。
「いちいちうるせーよっ!」
ヴァンは怒って声を上げたが、そこまで感情的にはなっていないようだったので、この2人はいつもこんな感じなんだと、アークは思った。
「まぁまぁ、つまり支店最強の名誉は、ヴァンの長年の努力の結果って訳だよね?
それは初めから力を持ってるEタイプなんかより、素晴らしい事じゃないかな。」
アークがフォローした。
「だろぅ?
アークは良くわかってんじゃねーか。」
ヴァンは上機嫌になった。
「ダメだよアーク!
あんまりおだてちゃ!
すぐに調子にのるんだから!」
やはりここでもエフィルが口をだす。
「はいはーい。
質問がありまーす。」
突然エリーが手を上げて声をあげた。
皆が一斉にエリーの方を向いた。
「ヴァンお兄ちゃんとエフィルさんは兄弟なの?
2人ともドラッグだから。」
ヴァンは“ヴァンお兄ちゃん”と言われた事をツッ込もうかと思ったが、まんざらでもないので、やめた。
「残念ながら兄弟なんだよエリー。」
エフィルは肩を落として答えた。
「やっぱりそうなんだ。
道理で仲がいい訳だね。」
エリーは何故が嬉しそうだ。
「どこが仲が良い…!」
パンパンパン!
ヴァンとエフィルから同時に発せられた言葉を、手をたたく音で芳志が遮った。
「キリがないので、この変でやめましょう。」
珍しく芳志が人をたしなめた。
2人はバツが悪そうに、黙り込んだ。
「また明日来ますから、アークさんは今日はこの医務室で安静にしていてください。
それでは。」
芳志は話をまとめ、医務室を後にした。
「芳志さん怒ったのかなぁ?」
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