サイボーグ

□プロローグ
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外はすでに橙色に染まっている。
あたりには田圃や畑が見渡すかぎり広がっており、その片隅にポツンと大きな建物が一軒建っている。
その建物から一人の男が出てきた。
フィブリスである。
彼は胸ポケットから、タバコを取り出すと、表情ひとつ変えずに、それを吸いだした。
フィブリスは以前エディから、
「アネットの前ではタバコは控えてね。」
と言われていた。
人の言うことをあまり素直に聞き入れない彼ではあるが、エディの言うことには、素直に従っていた。
エディーは身体は病弱ではあったが、人を従わせる、“強さ”の様なものがあった。
「はぁ…」
フィブリスは田圃を見渡し、ため息をついた。
「国を動かせるほどの経済力がありなから、なぜ自給自足にこだわるんだ!?
兄さんの考える事はわからない…僕なら…」
そこまでつぶやくと、彼は不敵な笑みをうかべた…
「まぁいい!
この実験が成功すれば、データを全て頂き、兄さん達には大人しくしてもらおう…」
そして空を見上げ彼は叫んだ。
「この国を変えるのは…この僕だ!」
それは天への誓いをたてるかの様な、力強い叫びだった。
「はぁ…」
と、彼は2度目のため息をついた。
それは独り言の多い、自身への呆れのため息だった。
そろそろ戻ろうかと、建物の方へ歩こうとした瞬間、突然足元が沈む様な奇妙な感覚にとらわれた…
刹那!
大地がとてつもない地響きとともに、揺れだした。
フィブリスは立っていられず、倒れ込む様に、地面に手を付いた。
このままこの星は、終わりを告げるのではないかという、恐怖すら覚えた。
そして徐々に揺れはおさまり、何事もなかったかのように、あたりは静かになった。
「はぁはぁはぁ…」少しずつ呼吸を整えたフィブリスは、立ち上がり、周りを見渡し絶句した。
大きな地割れが、アネット達のいる建物へと一直線に延び、建物が大破していた。
「ね…義姉さんっ!」
そう叫んだフィブリスは、ガタガタになった足場に転びつつも、建物へと走って行った。
瓦礫の山となった建物の前までたどり着いた瞬間、ガサガサと音をたて、何かが立ち上がった。
「義姉さん!?」
そこには、長い髪をなびかせ、右手にアネット、左肩にパドルを担いだ、エディーの姿が、いや…サイボーグとなったエディーの姿があった。
アネットはショックで気絶していたが、かすり傷程度の傷ですんでいた。
しかしパドルの呼吸は止まっており、エディーも既に停止していた。
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