サイボーグ

□第2話
2ページ/4ページ

旧校舎から飛び降りた時、プールサイドあたりで身体を打ちつけたと思っていたが、違和感はあるもののどこも痛みを感じなかった。
ここまで回復するのに、かなりの時間おれは意識を失っていたのだと考えた。
「まだ1日しかたってないわよ。
女子高生は、命に別状はないそうよ。
あなたの身体は車椅子で生活できる程度の回復は見込める傷だったけど、あなたとの約束を守る為、あなたをサイボーグにしました。」
それは唐突に告げられた。
「………」
おれは少しの間、唖然とし、身体をさわったり、鏡を見たりし、自分の身体を確かめた。
「これがサイボーグの身体なのか?
少し違和感はあるけど、今までと対してかわんねーぞ。」
「サイボーグに成り立てで、そこまで動ける方がおかしいんだよ。」
いたずらっぽい笑顔で、隣にいた女の子が話しかけてきた。
「普通そこまで動ける様になるまでに、個人差はあるけど、10〜20日はかかるんだよ。」
「そうか〜全然実感わかねーな〜。」
そしてまた確かめるように身体を動かした。
「ところであなた名前は?
私は工藤 鈴。
そしてこの子は娘の景斗よ。」
「へ〜もしかして漢字の名前なのか?
珍しいなぁ…。
おれの名前はヴィンセントだ。」
漢字の名前は昔この国では当たり前にあったが、確か数百年前に一部の一族を除いて、なくなったと聞いた事がある。
「それじゃぁヴィンセント、詳しい話は明日するから、今日はゆっくり休んで。」
「休んでって、おれは今起きたとこなんだけど…」
「あなたが良くても、こっちが眠いのよ!」
また怒られてしまった…
そして鈴は部屋を後にした。
「じゃぁね〜お兄ちゃ〜ん」
景斗も手を振りながら出て行った。
「お兄ちゃんって…」
景斗…あの子はなんなんだぁ?
鈴と同じ白衣を着ていたが、あいつもΩ社の社員なのか…?
恐らく今おれがいる場所は、Ω社の支店のα(アルファー)支店と考えて、間違えないだろう。
α支店とは、旧校舎からもよく見えていた、巨大な円柱状の建物だ。
しかし本当におれはサイボーグになったのか…?
全く実感がわかない…。
それにエディーとかゆー奴の声も気になる…
本当にただの夢だったのか…?
「まぁいっか。」
あれこれ考えるのが面倒くさくなったおれは、もう一眠りする事にした。
サイボーグも寝るんだなぁ…
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ