サイボーグ

□第5話
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「鈴さん、お腹の子供は何ヶ月だい?」
エバルは沈黙を破り、鈴の方へ向き直り口を開いた。
「3ヶ月ほどになります。」
鈴はお腹をさすりながら幸せそうに答えた。
「そうかそうか。
男の子かい?
女の子かい?」
エバルは微笑み、質問を続けた。
「女の子だ!」
鈴が答えようとすると、横からクロードが口を挟んだ。
「そうか…楽しみだな…。」
エバルは何故かばつが悪そうな表情で苦笑した。
この時の鈴には、エバルのこの表情の意味が分からなかった。
数分後、何の会話もなくクロードと鈴はΩ社を後にした。
 
「ねぇクロード。
何故あの時、男の子と女の子の双子だって言わなかったの?」
Ω社から帰る車の中で、鈴は率直な疑問をクロードに訊ねた。
「男の子の事がバレれば、親父は必ずその子を、次の後継者の候補にあげてくるからだ。」
クロードは運転をしながら、淡々と答えた。
「だからあの時ばつが悪そうな顔をしたのか〜?
…でもそれっていくらなんでも考えすぎじゃない?」
「いや…あの親父ならやりかねない…」
 

それから2年後(2131年)…
鈴は二人の子供
(長男 克己、長女 景斗)
を寝かしつかせて、リビングへと向かった。
「鈴…ちょっと話があるんだ。」
リビングに戻るなり、クロードが話しかけてきた。
「なに?
真面目なはなし?」
鈴は腰掛けながら訪ねた。
「ああ。
真面目な話しだ。
冗談の様に聞こえるかもしれないが、真面目に聞いてもらいたい。」
クロードはいつになく真剣だ。
「わかった。」
鈴も真剣な眼差しで応えた。
「実はおれには10年以上先の未来が見えるんだ。」
クロードは突然突拍子もない事を言った。
「…」
しかし鈴は動じる事なく、変わらず真剣な表情でクロードを見つめている。
「おれだけじゃない。
母さんは数時間先の未来が見えていた。
そして妹のエディは数分先の未来が見えるようだ。」
突拍子もない話しはさらに続いた。
「科学者のあなたから、そんなオカルト的な話しが聞けるなんてね…冗談を言ってるとは思わないけど…正直信じがたいわね。」
鈴は率直に答えた。
「うん…そのぐらいの気持ちで充分だ。俺たちに見えるのは可能性にすぎないとエディーが言っていた。
だから見えた未来が必ずしも現実になるとは限らないと…」
「それで10年後に何が見えたの?」
クロードが言いにくそうにしていた本題を、鈴が察して質問した。
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