サイボーグ

□第6話
2ページ/8ページ

「いいえ…意外性がどうこうという問題じゃないわ…。
あの子は知っているのよ…弾のよけ方を…。」
「へぇ〜弾のよけ方とかあるんだねぇ。
お兄ちゃんは物知りだね。」
景斗は単純に感心していた。
「いくら物知りでも普通に暮らしていて、そんな知識は必要ないはず…」
鈴はそう言ってうつむくと、右手で顔を覆った。
「つまりあの子は、そんな知識が必要な環境で生きてきたという事よ…」
そう言った鈴の右手の奥は悲痛な表情をしていた。
顔を覆った右手は、その表情を隠す為のものだった。
「お母さん…」
母親の気持ちを察したのか、景斗は言葉を失い黙ってしまった。

かれこれ20発は撃ってきただろう。
撃たれている内に、10発目くらいから、おれの動きは確実に変わっていた。
ほとんど同じ場所から動く事なく、全ての弾を紙一重で交わす様になっていた。
始めの方はあまりに激しくよけすぎていて、弾はおれの2、3メートル先を通過していた。
つまり動きに無駄がなくなったのだ。
「次は手で弾を弾いてください。」
そうこうしていると、景斗から次の指示が出た。
おれは言われた通り、手で弾いた。
よけるよりもはるかに難しかったが、なんとか弾く事が出来た。

「弾いちゃった…」
景斗は驚き、思わず呟いた。
「今の段階でシンクロ率はどの位?」
鈴が目の前に座って画面とにらめっこしている男性スタッフに訪ねた。
「信じられない数値ですが最高で96ですね…。」
男性スタッフは唖然とし答えた。
「…あまりこんな初期段階の検査は必要ないかもしれないわね…」
「じゃあ一気に実践やっちゃう?」
鈴の呟きに対し、景斗が素早く切り替えし訪ねた。
「そうねぇ…フリッドとラキスを呼んでちょうだい。」
「えっ!?
あの二人を呼ぶんですか?」
鈴の指示を聞いて、先ほどのスタッフが驚き、聞き返した。
「この塔にあの二人以外に、シンクロ率90%を超えてるサイボーグはいないじゃない。」
「それもそうですね…すぐに呼んできます。」
 
立体映像が発砲しなくなって、5分ほどたった。
景斗に
「ちょっと待っててね。」
と言われ待ってはいるが、こんな場所で何もせず立っていると、たかだか5分でもずいぶん長く感じてしまう。
プシャー
おれが待ちくたびれていると、部屋の入り口から2人の男が入ってきた。
「始めまして…私はラキスと言います。」
2人の男の内の一人が口を開いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ