サイボーグ

□第8話
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「まぁちょっと有り得ないぐらいにシンクロする速度は早いけど…。」
「シンクロ率がどういうものか簡単でいいから説明できる?」
景斗は学校の先生から指された時の様ないやな感覚を覚え、少し身構えた。
「え〜とね〜…簡単に言うと、機械の身体と脳との結びつきをパーセンテージで表したのがシンクロ率でしょ?」
「まぁだいたいはそんな感じね。」
景斗は正解をもらって、小さくガッツポーズをした。
「景斗の言う“結びつき”を具体的に言うと、いかに脳が機械の身体を理解し馴染んでいるか…つまり適応しているかって事になるわね。」
「それじゃシンクロ率=適応力って事?」
「そういう事。
あの子は、いろんな環境を乗り越えてきたからこそ身に付いているのよ…ズバ抜けた“環境適応能力”が。」
「へ〜そういう事か〜…私、お兄ちゃんがすごいって感激するだけで、具体的な事何も考えてなかったよ…科学者失格だね。」
景斗はそう言って、俯いた。
「まぁ私は科学者として述べただけよ。
それが全てってわけじゃないのよ。
それにね、あの子の洞察力やちょっと不器用な優しさは、生まれ持って備わっていたものだと思うの。」
鈴の目は今までのキリッとした科学者の目ではなく、優しく暖かい母親の目になっていた。
「クロードに…お父さんにそっくりなのよ…。」
「お父さん?
…そっかぁお父さんに似てるのかぁ〜。」
今まで堅苦しかった二人の空気が一気に和らいだ。
「私とお兄ちゃんって似てないから二卵性双生児なんだよね?
私はお母さん似だから、お兄ちゃんはお父さんに似てるんじゃないの?」
「そうね…似てるかもしれないわね…。」
「しれないわね…って、お父さんの顔忘れちゃったの?」
「忘れたんじゃなくて、知らないのよ。
…お父さんね、私と出会う前に、実験中のミスで、薬品で顔を焼いてしまったの。
皮膚は元通りきれいに戻ったけど、顔は別人の様に変わってしまったみたいなのよ。」
「そっかぁ、きっと顔を焼いちゃう前のお父さんにそっくりなんだろうね。」
景斗はニコニコと嬉しそうに言った。
「ねぇねぇ、お母さんとお父さんってどうやって付き合い始めたの?」
景斗がちゃかすように鈴に訪ねた。
「そんなの話したくないわよ。」
鈴は少し照れて、景斗から目を背けた。
「今朝のお兄ちゃんみたいな、お父さんの不器用な優しさに触れて、お母さんメロメロになったんじゃないのぉ〜…?」
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