サイボーグ

□第8話
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鈴が答えないので、景斗は勝手に想像して、しゃべりだした。
「私も今朝のお兄ちゃんにはグラッときちゃったもんなぁ〜。
お母さんもそんな感じだったんだろうなぁ〜。」
景斗は鈴の顔をのぞき込みながら、しゃべり続けた。
「あ〜もぅ、うるさいわねぇ。
わかったわよ。
話せばいいんでしょ!」
「やったぁ〜。」
景斗は両手を挙げて喜んだ。
 
 
 
あれはまだ私が、Ω社本社のある研究チームに属していた時の話よ。
10人くらいいた私のグループの中に、お父さんもいたの。
普通は社長の長男だなんて聞いたら、周りは付き合いにくいものだけど、お父さんのざっくばらんで気さくな性格が、そんな肩書きを忘れさせ、あの人の周りにはいつもたくさんの人が集まっていたわ。
そんなお父さんとは、私も仲良くはしてたけど、その時はまだ、ただの同僚でしかなかったわ。
でもある日、私は当時悩んでいた事を、お父さんに打ち明けたの。
私自分で言うのも何なんだけど…すごく美人だったの。
当時でも正直自分で自覚もしてたわ。
だから、言い寄ってくる男性がたくさんいたのよ。
でもね、付き合っても長くは続かなかったの。
私、結構気が強いじゃない?
「もっとおしとやかな人かと思った。」
とか…
「顔のわりには性格きついのな。」
とか…
私と付き合った人は、大抵そんな事を言って去っていったわ。
お父さんに悩みをうちあけた日も、フられた後で泣いてたの。
「どうして性格にあった顔じゃないの!
こんな顔嫌いだよ!」
私はそう言って、お父さんに泣きじゃくったの。
「あんた性格きついもんなぁ。
告る男もそのぐらい見抜けって話だよな。」
お父さんは何故か上機嫌で、まるで私を笑っているようにも感じたわ。
「あんた頑固だから、それで性格変える気なんてないんだろ?」
もちろんその通りだったので、私は頷いたの。
「それじゃぁ話は早い。」
お父さんはそう言うと私の顔に、餅でもこねるみたいに、手のひらを顔全体にグニグニと押し付けてきたの。
私は訳も解らず抵抗したけど、男の人の力にはかなうわけもなく、なすがままだったわ。
お父さんは手を離すと、
「はっはっはっは!
おもしれぇおもしれぇ!
まるでピエロだぜっ!」
そう言って、私の顔を見て大笑いしだしたの。
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