文章?

□Mの素質
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「ひじ、土方さーん!」

「何だ」

「た、助けて下さい!」

「あ?」


昼下がり。

のどかな青空の下、少年が頓所の廊下を走っていた。
勢いよく土方の部屋の戸を開けると、転がり込むように部屋の中へ入ってくる。

どこか切羽詰まった表情だ。


「どうした?」

「あの、話は後です!とりあえずかくまって下さい!!」


そう言うと空は勝手に押し入れのふすまを開け、布団を頭から被り、またふすまを閉めてしまった。

しばらく後に誰かの足音が聞こえ、部屋の戸が開く。

少し開いた戸の間から、沖田がぬっと顔を出した。



「土方コノヤロー」

「お前はまともに挨拶もできねえのか」

「ここに空来ませんでしたかィ」

「空?来てねえよ」

「そうですかィ…どうも失礼しやした」


沖田の顔が引っ込み、ぴしゃりと鋭い音が放たれる。
足音が遠のいていき、再び静寂が戻った。


「行ったぞ」

「……」

「おい」

「……」


いくら呼んでも返事が無いので仕方なく押し入れを開けてみると、空が真っ青になってブルブル震えている。

怯えて小さくなる姿は、何となく小動物を彷彿させた。


「大丈夫か?」

「は…はい…あ、ありがとうございました…」

「いいけどよ、総悟と何かあったのか?」

「あの、いえ、その…」


もじもじして口ごもる空。
空は恥ずかしそうに俯き、何秒間かまばたきした。



「し…知り合いに…僕にMの素質があるって言われたんです…」

「は?Mの……は?」

「あの…意味わかんないとは思いますけど…その人ドMなんです!その人がSに目覚めるくらい僕にはMの素質があるって……」

「…で?何で総悟に追われてたんだ?」


そう聞くと、空は冷や汗を流しながら小刻みに震えだした。
きっとさっきの追いかけっこについて思い出したのだろう。


「その…そのことを沖田さんに話しちゃったんです…」

「話しちゃったの!?」

「そしたら沖田さん、Sスイッチ入っちゃったみたいで…」

「…だろうな…」


なるほど、納得がいく。

確かにSモードの総悟は怖い。

鬼の副長と呼ばれる土方でさえ、相手にするには少しやっかいである。

子供には少しパンチが効き過ぎかもしれない。
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