蘓芳な狂想曲
□9章
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ポツ
ポツ
ポツ
梅雨にもなれば湿った雨が降る。
江戸付近の古い寺。
老女が一人入っていく。
久しぶりの夫の墓参り。
傘を差し古びた墓石に向かって歩く。
その行く道先に銀髪の女が一人。
そう…
戦場から消えた坂田銀時だ。
老女は一度何事も無かったように通り過ぎ、帰りにまた通ってみるとまだいた。
「どうしたんだぃアンタ。
ずっとこんな処に居たら風邪引いちまうよ?」
「…いいんだ。
放っておいてくれババァ。」
素っ気なく諦めたような口調で老女に言い放つ。
しかし、人情の厚いその老女が易々と諦めるわけがなかった。