鬼との暮らし方
□prologue
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「これはね〜、海に行った時の写真だよ〜」
母はいつも何処かの写真を撮ってきては私に見せ、その時の話をしてくれる
幼い私は瞳を輝かせながら、写真を見て、話をきいていた
いつかその場所に行けることを信じて
月日が経つにつれ、私は外に出れないことに苛立ち始め、それでも話を続ける母を突き放した
母はいつでも出れるのに
私は出れない
そのことが憎く
羨ましかった
やがて母も最初は長かった話が徐々に短く、シンプルになっていき
挨拶くらいしか話さなくなっていた
そして
3年前の春
母は私をおいて何処かへ行ってしまった
でも仕方ないこと
母は『人』で
私は『鬼』だから