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□お泊まり大会
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「よし、じゃがいもの皮を剥いてくれ。ピーラー使っていいから、それくらい出来るだろう」
「おー。なんだこれどうつかうんだ」
「そんなことも知らんのか全く…ほら、持て」
俺の左手にじゃがいも、右手にそのピーラーというのを持たせると、ポップは俺の手ごとそれを掴んだ。
「?!」
「いいか、こうして表面をスライドさせるんだ。するとほら」
「え、あっちょっ…ポップ…?」
顔が熱くなったままポップを見ると、ワンテンポ遅れて赤面したポップは慌てて手を離した。
「す、すまんっ!いや、いつもカブに教えてやるから、つい…」
「べ、別にいいんだけどよ…うん…」
そのままちょっと気まずい空気が流れ、俺は慌てて皮剥きを始める。ポップもぎこちなく料理を始め、しばらく静かに調理の音だけが響いていた。

「ん、剥きおわった」
「どれ…ふむ、いくらお前でもこれくらいまともに出来るんだな」
「はいはい失礼なこって…次は?」
「それじゃあ、鍋を見てて湯が沸騰して蓋が動きだしたら教えてくれ」
なんだ、今度はそんなに大変な仕事でもなさそうだ。俺は鍋の前に立ってしばらくぼーっと眺めていたが、不意にチラッとポップを見てみた。ポップは長い睫毛を伏せて、次々と野菜を切っている。あ、なんかこの眺め、すげぇいい感じ。
「ディスコ!何ぼーっとしてるんだもう沸いてるんじゃないのか」
「へ、あっほんとだ」
「全く…ちょっと退いてろ」
ポップは綺麗に切れた野菜をまな板ごと持ってきて、全部鍋に投下した。色鮮やかなブロッコリーやらじゃがいもやらが底に沈む。
「なんかさー…俺前にも思ったんだけど」
「なんだ」
あ、次は鶏肉を切るらしい。冷蔵庫からパックを出してきた。
「こうして一緒に飯つくんの、夫婦みてーだなって」
パコン。

間抜けな音をたてて、ポップの手から離れた肉のパックが床に落ちた。…しまった、またやっちまった。怒っただろうか。
「ポップ、肉落とした。まだラップかかってるから大丈夫だけどよ……?」
仕方なくそれを拾い上げてふと顔を見上げると、怒りで小刻みに震えていると思っていた彼は、なんと唇をへの字に曲げて真っ赤になっていた。やべ、可愛い、なんて俺もつられて赤面。
「る、さい、いーから渡せっ」
「あ、ちょっと待てよポップ〜!」
俺からパックを奪ってさっさとまな板に向き直るポップに、次に俺を襲うのは押さえきれないにやけ。
「なになに、怒んないの?もしかして嬉しかった〜?」
「五月蝿い!」
「あ、耳まで真っ赤〜!いやーほんと可愛いな」
「っひ、このっ…刺し殺すぞディスコ…!」
後ろから抱き付き、物騒な事を言うも全く怖くないポップの赤い耳にキスをする。あ、デジャヴ。けれど今はあの時みたいに一方通行じゃない、色々したって大丈…

スコンッ!
「っったーーー!!」
「調子に乗るなと、はあっ、言ってるだろうが!」
包丁(の背)で勢いよくチョップされた。もうちょっとで出血を伴っていたに違いない、すげえ痛い。額を押さえて転げ回る俺に、無情なポップの声が突き刺さる。
「お前はここにいると何するか分かったもんじゃない。向こうに行ってカブの遊び相手をしていろ」
「ひどいぜポップ…」
涙目で見上げたが、無言で再び包丁を構えるもんだからおとなしく退散。カブと遊んでいると、ほどなくしてクリームシチューのいい匂いが漂ってきた。
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