HTF小説

□捕食者と獲物
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アリクイってのはその名の通り、蟻を食う動物だ。だから僕が奴等を食うのは本来誰にも邪魔されないハズで、奴等も見つかったら最後食われるのを待てば良い話だ。
要するに一番可哀相なのは僕だと思う。



「っ、っ……も、やめっ」
「っとに学習しねーな、俺らより遥かにでけー脳してるくせにこのザマは何だぁ?」
「お兄ちゃん、私お母さんと家に戻ってるね。それちゃんと解体して持って来てね」

凶暴でずる賢い蟻の一家に、今日もズタボロにされた。身体中傷だらけで痛くて痛くて、けれど絶対即死なんてさせてはくれない。
こういういつもの残酷で拷問じみた仕打ちは、目の前にいる蟻の長男の提案らしい。悪趣味この上ない。
「あんたドMだろ?毎回毎回俺らに殺されてよ、バーカ」
「はっ、食料の分際で…黙れよ……っぐ!」
髪を乱暴に掴み上げられ、眼前に奴の顔が来た。

「食料はあんただろうが。生きたまま料理してやらねーとわかんねーってか?」
「僕は、アリクイ…だから、お前達に殺されようと、捕食者なのに変わりはない!」
「頑固だなー。じゃ俺らはアリクイ喰いか?お前実は捕食なんてしたことねぇんだろ」
痛い所を突かれて思わず言葉が詰まった。僕はタイムスリップして昔の無抵抗な蟻を食べた事はあるけど、蟻の抵抗を物ともせず腹に収めた事はまだ無い。一時的にはあるけど。

「僕は諦めない…いつか絶対っ、お前らを食べてやるんだ!」
「威勢の良いこって。でもなぁ、俺らだってそう何度もチャンスくれてやるお人好しじゃねーんだよ」
蟻は僕の頭を掴むと、文字通り口に噛み付いてきた。負けじと噛み付き返そうとしたが、舌を引っ張り出されてしまい出来ずじまい。
「どこまでいたぶれば気が済むんだ?ぶち殺して食っちまう前に、好きなだけ痛め付けてやるよ」
「ほんなの、おこほあいあっ…!(そんなの、お断りだ)」
蟻は僕の舌に噛み付き、およそキスとは呼べないキスをしてきた。舌を傷付けられたのは前にもあったが、これは前より痛いかもしれない。
「ぐっ…ぅうう…!!」

涙目でバタバタと抵抗するも、さらにキツく噛まれて口内でぐちゃぐちゃに揉まれるだけだ。ダラダラと血が溢れて、とにかく気持ち悪かった。

「ふぐ、うぅ……っ…!」
やばい、クラクラする、死ぬ。
「チョー気持ち良さそう。何、昇天しそう?」
笑われてる、クソ。誰が気持ち良さそうだ。何度殺されても、こいつにだけはどうしても負けたくないんだ、僕は!

「俺ぁあんたの事けっこー好きだけどな。あ、泣き顔がか?まじたまんねー」




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