【連載】転生パロ

□輪廻ー飛鳥編ー
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生まれ変わってまたあいつに出会うのなんて、簡単だと思ってた。

あいつもきっと、私のことを探してくれていると、思ってたから。

けれど、何十回、何百回と生まれ変わっても、あいつに会えないことが多く、会えたとしても私が望む状態ではなかなか出会えなかった。
何故なら、あいつには前世の記憶なんて微塵も残っていなかったから。



例えば、私が百姓、あいつが侍の時があった。
この世界では、私はあいつの記憶を取り戻すことができず、あいつに斬られて殺された。

他には…出会ったときには既にあいつが既婚者で、幸せそうな顔をしているあいつを直視できず、私から逃げたこともある。

特攻隊に選ばれてしまったあいつを救おうとし、国に消されたこともある。

私がかなり歳をとってから出会ったこともあった。
あいつに出会えた翌日に、私は死んでしまったけれど。
そう言えばその逆パターンもあった。
物心がついて初めてあいつに出会えた時には、あいつは老衰で死ぬ一歩手前だった。
もちろん…その世界では、二度とあいつに出会えることはなかった。

私が医者、あいつが患者の世界では、記憶を取り戻しそうになったのに、あいつの体が持たず、死別したこともある。

…そもそも同じ時を同じ場所で生きる事が奇跡なのだと身を持って実感してた。
何故なら毎回変わる親の都合で海外に住んだり仕事の都合で西洋にいったりもしたのだが、その先であいつにたまたま会うことも数回あったからだ。
日本にいたら多分出会えなかったのだろうと思う。

正直、幾度となく続くあいつのいない人生に、私はもう疲れきっていた。


「どう?もう諦める?」


その度に、あの男はそう聞いた。
その声色は随分優しくなったと思う。
相変わらず、その顔色から本音を窺うことは出来なかったけれど。


「…私が諦めたらもう、二度とあいつに会えないと思うから」


何百回言ったかわからないその言葉を返すと、男は

「そっか」

と、言い笑った。


「こんなに頑張ったのは太子が初めてだよ。」


今度は、君が望む形で会えるといいね

そう悲しそうに笑うと、男は私の体を押した。

その瞬間、私はまた生まれ変わるのだと悟った。
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