【連載】転生パロ
□輪廻ー飛鳥編ー
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鯉のぼりがしまわれ早数週間。
ギラギラと光る太陽と爽やかな風が早くも初夏を教えてくれる。
この世界で、私を育ててくれた親の元を離れてもう10年が経った。
私がこの世界に生を受けてから早30年。いまだにあいつ…小野妹子には会えない。
「はー…どこにおんじゃい馬鹿芋」
ふー、と溜め息を吐きながら目の前の柵にもたれ掛かると自分の腕時計が目に入った。
昼休みももうあと10分で終わるようだ。
妹子に会うのが目的だから、特になりたい職業なんかなかったけれど、そう言えば飛鳥時代の記憶があるんだからそれを活かせる仕事とかないかなあと思っていたら、教師と言う職業があったことを思い出した。
そしてそのまま何となくとある高校の社会科の教師になった。
何となく、で決めてしまったけれど生徒は可愛いし、授業が楽しいと彼らに言われればやり甲斐はあるんだけどね。
「あっ聖徳先生こんなところにいたんだ。」
3組の藤田くんが探してたよー
と人の言い笑みを浮かべながら古典の松尾先生が話しかけてくる。
「えー、何だろ?松尾先生なんか聞いてる?」
「うーん…あと一ヶ月ちょっとで中間テストだしその事についてじゃないかなあ?」
あ、隣いい?
と言いながら松尾先生が屋上の柵にもたれ掛かる。
「もうそんな時期かあ…ついこの前三年生が卒業したと思ってたのに…時が経つのははやいねー。」
と一人ごちると、松尾先生が「あはは」と笑った。
「あっという間に年取っちゃうよね」
私もう40過ぎちゃった。
と松尾先生が笑う。
本当は先輩なのだけど、人の良い松尾先生はとてもフランクだからついつい敬語が疎かになってしまう。
(本人も気にしてないみたいだからまあいっかと思ってしまうのは甘えかもしれない。)
「聖徳先生次の時間は休みだっけ?」
「うん。そろそろテスト問題作らなきゃかなぁ」
「そっかあ。私も休みだからここ来ちゃったけど私もそろそろ作り始めないと…。6月から教育実習生も来るしのんびりしてる暇なかったね」
はは、と松尾先生が笑う。
「そうか…教育実習生……あれ、教育実習生と事前に会うのっていつだっけ?」
「今日の放課後だよ」
「そうだっけ?やばいすっかり忘れてた…」
「思い出せてよかったよ」
「ありがと!あ、じゃあ私そろそろ職員室戻るね。藤田に合わなきゃだし」
「うん、いってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振る松尾先生に手を振り替えし、ひんやりとした重たい鉄のドアを開け階段を下る。
その途中、生徒に「センセー、お昼またカレーだったでしょー」とか「先生加齢臭するー」とか声をかけられたけど、「うっさいぞーい!お前ら早く教室戻りんしゃい!」と返せば、「はーい」と素直に返事をして各々教室へ戻っていく。
皆素直で良い子達だ。
色々な職業についたけど、教師はわりと楽しいなーとか思う。
天職かどうかはわからないけど。
職員室に戻り、自分の席にどかっと座ると、ふうと溜め息を吐く。
「よーしやったるでー!」
と意気込むと、いつのまにか戻っていたらしい松尾先生がクスクスと笑うのが聞こえた。