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□花咲く季節を待ちながら
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「明けましておめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」

 年が明けて、新年のご挨拶を。家の中ではもう済ませたので、今度は伊東家総出でご挨拶へ。うちから徒歩2分のところにある、2軒隣のプチ豪邸が挨拶先。

「あっ、カズも帰ってたんだねあけおめー」
「パパさん、さすがに盆と正月くらいは戻るよ」
「ほら、雅弘の顔はたまに見るけどカズは全然見なかったじゃん、元気してるかなーって」
「そりゃ息子より顔見てたらおかしいっしょ」

 伊東家総出で挨拶に来たのは浅浦家。昔から家族ぐるみの付き合いをしてて、下手すりゃ変な親戚よりも世話になってる。去年は浅浦家がこっちに挨拶に来たから、今年はうちの番。
 俺ら家族を見た瞬間、犬のように駆け寄ってきたのが浅浦のパパさん。多分浅浦家で一番軽い人だと思う。顔こそ浅浦に似てるけど、ノリが全然違うんだ。年相応ではないように見える。

「雅弘、アンタこの父親の元でよくまともに育ってるね」
「敢えて言うとすれば、反面教師ってヤツだと思います」

 俺とパパさんのやり取りを、京子サン(うちの母さん)と浅浦が呆れた様子で見ているし、それを俺の父さんと浅浦の母さんがまったりと眺めているのもお決まりの光景。

 元々うちの父さんと浅浦のパパさんも幼馴染みで、今で言う俺と浅浦との関係と似たような付き合いをしてきたんだとか。年はうちの父さんが2コ上。だからパパさんは父さんによく懐いていたとか。きっと兄貴のように見てたのかもしれない。
 実は京子サンも結構実家が近くて、それこそ幼稚園の校区とかそういうレベルのご近所さん。浅浦のママさんこそ全く関係のない人だけど、子供が出来た時期も似たり寄ったり。こうやって2代とかに亘る濃密なコミュニティが形成されているというワケだ。

「未夏もまともだし。きっと香織さんの教育がよかったのかもね」
「未夏がまともかどうかは怪しいですけど」
「ちょっとアニぃ! 人がまともじゃないとかどーゆーコト!?」
「そうやってすぐムキになるところとかな」

 浅浦の妹の未夏も今は大学生だ。確か星ヶ丘大学に通ってるとか。もうみんな大学生にもなったのね、こないだまで小さかったのにと浅浦の母さんはしみじみとしているし、父さんもそれに頷いている。
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