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□はみ出し者の本懐
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「それでは、各大学の活動報告を。それじゃあ、星ヶ丘から。朝霞君、お願いします」

 圭斗からカオルの名前が呼ばれた瞬間、ゆらり、背中の夜景が歪んだ気がした。星港の夜景に浮かぶ某所ビル6階中会議室が、異様な空気に包まれる。

「星ヶ丘の部活としてはファンタジックフェスタのステージMCなど。朝霞班としては向島インターフェイス放送委員会としてファンタジックフェスタのDJブースに参加。これからは夏の丸の池公園ステージに向けた準備を加速。以上」

 朝霞薫、星ヶ丘大学の鬼プロデューサーだ。ただ、それはあくまでオンの時の話。ステージに関わらない、例えば定例会だとかラジオのイベントの時は割と穏やかな方なのに。
 今の活動報告からは何と言うか物々しい、禍々しいオーラが空間を歪めていたと言うか、目が負の感情を湛えていると言うか。鬼を通り越して地獄かどこかからの使者のようにも見える。
 これにはみんな、星ヶ丘では大変なことになっているのかもしれないと察したようで、次の言葉が続かない。この空気を何とかしろと、みんなの視線が議長の圭斗に突き刺さる。

「……こほん。朝霞君、何かあった?」
「失礼。ちょっと部活でのことを思い出した腹が立ってたってだけで。申し訳ない」
「星ヶ丘も大変なんだね」

 星ヶ丘大学は向島インターフェイス放送委員会に属する中でも結構変わっている。星ヶ丘の放送部は60人くらいいる大きな部活で、ステージ8にラジオ2くらいの割合で活動する名実共にステージ系の大学。
 ただ、定例会との関係があまり良くなくて、定例会からのお願いだとか定例会主動のイベントにはあまり出てきてくれない。その割に対策委員との関係は割と良好で、対策のイベントには結構出て来てくれる。
 カオルの話によればどうやら星ヶ丘のお偉いサンの中では、インターフェイスは自分たちの活動を阻害する物だという認識らしい。それで、インターフェイスの人と仲良くなると部内での扱いが悪くなるとか何とか。
 星ヶ丘の偉い人たちはこの定例会にもウチから出すような人材はいないと言うけれど、毎年何人か出てくるいわゆる「はみ出し者」をこの定例会や対策委員に派遣してくる。

「そんなにインターフェイスを毛嫌いするなら抜けりゃいいんだけど。抜ける度胸も乗っ取る度胸もないクソみたいな連中の下でイエスマンやってるだけならはみ出し者やってる方が楽だぞ、圭斗」
「ん、僕は誰かの下に付く気はさらさらないものでね」
「お前らしいな」
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